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理由_3 ページ3

何も、気づかなかった。
物音はしなかった。

穏やかな日差しの中、風の音にかき消されたということもないはずだ。

しかし、彼の視界には、
いつのまにか1人の男の姿が映っていた。


「もしかして、ナマエを探してる?」

「…」


柔和な笑みを浮かべた男に、警戒心をあらわにする降谷。


(…組織の人間、――いや…)


悟られないよう表情には出さないまま、
瞬時に思考をフル回転させるも、
相手からは攻撃的な雰囲気も穏やかな殺気も何も感じず、
投げかけられた言葉に違和感を覚えただけだった。



「僕に何か用ですか?」

「――ナマエを探してるのかと思ったんだけど。違った?」

「ナマエ…?」


男の口から発せられたその名前に、降谷は眉を寄せた。



「あぁ、もしかして、”分からない”?」


そして、あたかも当然のように数歩近づいてきたその男に、


「君は誰だと聞いているんですが」


と、口調を強めた。



「あぁ。ごめんごめん。
僕は礼央。ナマエの知り合いというか、先輩ってところかな」

「…」


軽く頭に手を添えるようにして、申し訳なさそうにそう答えた礼央と名乗る男を、
訝しげに見つめる降谷。



「探してるのかと思ってたけど。
まぁ、もう、…覚えてないかな」


そう言いながら、
柔らかく目を細めてさらに一歩近づいてきた男に、
降谷は警戒しつつ一歩距離を取った。


「何の話をしているんだ」

「…」

「ナマエというのは――」

「…」



唇を複雑そうに小さく歪め、
言葉をつぐんだまま降谷の横を通り過ぎて、柵へと近づいた男。

降谷はわずかに苛立ちを覚え、
思わずその腕を掴もうと手を伸ばし――




「…っ――!!」




小さく息を呑んだ。






自身の掌は、
何も感じないまま、するりと男の身体をすり抜けていた。

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white12(プロフ) - 桜咲さん» 温かいコメント、ありがとうございます!ご心配・ご迷惑おかけしてしまい申し訳ありません...。お楽しみ頂けていたら嬉しい限りです。本作品をお読み頂き、本当にありがとうございました!次回作は全くの未定ですが、その際はお付き合い頂けたら嬉しいです。 (2022年2月12日 19時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - reさん» お読み頂きありがとうございます!随分放置してしまっていたのに、そんな風に言って頂けて本当に嬉しいです。素敵な作品を沢山書かれているreさんに嬉しいコメントを頂いて恐れ多い限りですが、もしまた執筆することがありましたらお手に取って頂けたら嬉しいです。 (2022年2月11日 10時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
桜咲 - 完結おめでとうございます! 更新止まっていて心配していました。体調大丈夫でしょうか...。凄く素敵な作品をありがとうございます!景色もそうですが、心理描写が凄く綺麗で引き込まれました。新作が出たらまた読ませて頂きます!! (2022年2月10日 21時) (レス) id: 8613f618c9 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 更新、本当に嬉しいです。そして完結おめでとうございます!文章がとても綺麗で繊細で、大好きです。切ないけれど胸が暖かくなるようなお話で、今回もとても素敵でした。寒い日が続きますが、ご自愛ください。新しい作品も楽しみにしています。 (2022年2月10日 13時) (レス) @page21 id: f0490f49ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年10月13日 23時

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