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吸い込まれそうな蒼_7 ページ32

「分からない?」

『どうしても、
ぎゅって、
ぎゅ…って――、その手に触れて、
…ちゃんと、言いたいって、思ってたんだけど』

「…」

『良く、分からなくって』


一歩、また彼女に近く降谷。
はっきりと視界に映ったAは、
不思議そうに、軽く首を傾げていて。


降谷の頭に、ふと、
雪村香奈の名前が浮かんだ。


(…え――)


しかし何故、
”そう思ったのか”、降谷は理解できなかった。
Aから視線を外し、
軽くこめかみに指先を当てて、眉間にシワを寄せる降谷。



『なんでか分からないけど…、
――ついさっきまで、一緒にいたような、気も…、して』

「…」

『でも、良く…分からない』

「…」

降谷がゆっくり視線を戻すと、
Aはまた、ぼんやりと空を仰ぐような格好で目を細めていて。





『…おかしいなぁ』




と呟いた。




遺体は無い。



でも、無意識なのか。


彼女は、
ふわりと、胸の少し前で両手を包む仕草をして、ゆっくりとそれを開いた。



空を見上げた彼女は、
寒空の下、七分袖の白いカーディガンにジーンズという相変わらず違和感のある格好で、


とても優しそうに、


とても悲しそうに、


笑っていて。



その瞳の端からは、
大きな涙の粒が、こぼれ落ちていた。



青空から降り注ぐ光を浴びたように、

まるで、その光を空に返しているかのように溢れるそれは、
とても――、

綺麗だった。





「…―― っ…」



降谷が衝動的に手を伸ばしたものの、
その涙もやはり触れることはできないようで。
温度すらも感じなくて。


やはり、手のひらが掬ったのは、
ただ、冷たい空気だけで。


伸ばされた手に気がついてはいないのか。
空を見つめたままの彼女の前で空を切る掌をぼんやりと見つめた後、
降谷は走ってその場を離れた。

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white12(プロフ) - ra-raさん» 返事が遅くなって失礼いたしました。嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。更新が不定期で申し訳ありませんが,引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。 (2021年9月24日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra-ra - こんにちは!この先どのような物語になっていくのかワクワクした気持ちで読んでます。のんびりと更新待ってます! (2021年9月19日 17時) (レス) id: f4447b9ee9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年9月19日 8時

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