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吸い込まれそうな蒼_6 ページ31

『…さぁ。もうすぐ、かな』


と曖昧な返事を溢すA。



「それが終わって、…やりたいことって何だ?」


吸い込まれそうなほどに澄み切った蒼と、
自身と彼女を包み込むかのように頭上から降り注ぐ太陽の光がそうさせるのか。
降谷はなぜか躊躇うことなく、尋ねていた。


『…』

一方、Aは少し躊躇うように降谷から視線を外し、
柵の外を向いて、空を仰いだ。


続く言葉があるのか。
一歩静かに彼女に近づき、横に並ぶでもない微妙な距離から、
その背中を、ほんの少し見え隠れする横顔を静かに見つめる降谷。


『手を、握りたくて』

「手?」


Aは、両手の指先を軽く握り合わせる仕草をして、
俯くようにしてそう、呟いた。
それは降谷が以前にも見た姿だった。


『温度が、ないし。
そもそも触れないし。…分からないから』

「…」

『だから、ちゃんと温度を感じて、
ちゃんと、触れて。
ぎゅって、掴んで。
ちゃんと、言いたいの』


言葉どおり、指先を、掌を躊躇いがちに動かしながら、
その温度を掴もうとするような仕草をするA。

目をほんの少し細め、穏やかに軽く眉を寄せた横顔。
自身の目にわずかに映るその彼女の横顔に、降谷はすぅっと息を飲み込んだ。


『…ごめんねって』

「…」

『ありがとう、って。



――ばいばい、って』


それは、あまりにもシンプルな願いだった。
人が死ぬのを、殺されるところを見たくない、と言う割に、
1000人という多くのそれに立ち会わざるを得ない仕事。
その対価として与えられるらしいのは、たった半日という時間。


ただ、そのシンプルすぎる彼女の願いは、
降谷には、――――理解できる気が、した。


『とっても大事な人に、
そうやって、――ちゃんと、言いたい。
それが、やりたいこと…かな』

「大事な、人って――」

『…でも、良く分からなくて』

「え?」


ポツリと消えるように溢された言葉に、
ふと、眉を寄せる降谷。

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white12(プロフ) - ra-raさん» 返事が遅くなって失礼いたしました。嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。更新が不定期で申し訳ありませんが,引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。 (2021年9月24日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra-ra - こんにちは!この先どのような物語になっていくのかワクワクした気持ちで読んでます。のんびりと更新待ってます! (2021年9月19日 17時) (レス) id: f4447b9ee9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年9月19日 8時

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