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声にならないほどの ページ21

翌日。


「昨晩連絡があった件ですが」

「あぁ。その後の捜査はどうだ」

「一課の調べで被害者の男の身元は割れています。それと――」



公安警察の降谷のデスク。
風見の報告を聞きながら、降谷は鋭く目を細め、


「あの通り魔事件の、…容疑者?」


風見が告げた言葉を復唱した。


「そのようです。
所持していたバッグからナイフが見つかったことで、念の為家宅捜索をしたところ、
あの事件に関与したと思われる当時の日記のようなものが見つかったらしく」

「…」


話によれば、昨夜刺された青年の自宅から見つかった日記には、
雪村香奈を襲ったあの事件をほのめかす内容だけでなく、
その数ヶ月前から、
自宅付近の野良猫や鳥への殺傷を繰り返していた記録や、
雪村香奈の事件以降も、
少なくとも2度、
鈍器を使用した通り魔的犯行を起こしていた記録が綴られていたらしい。



「一課は裏どりを進めているようで、これ以上の情報はこちらには――」


「いや、問題ない。
通報したとはいえ公安が関与する事案ではなさそうだ。
風見は、先ほど渡した書類を確認して、調査を進めておいてくれ」

「了解しました」


“では、失礼します”


と、去っていく風見を見つめて軽いため息を吐いた降谷。



――奇妙な感覚。


雪村香奈と、容疑者という形で繋がっていた人物。

雪村香奈の病室に度々現れている様子の、――彼女の存在。

昨晩の、雨の中で佇む姿。

あの現場で、自身が感じた嫌な予感と脳内をふと巡ったおかしな考え。


クリアに思えるはずのそれらがどうにもうまく結びつけられず、
降谷は大きめの舌打ちをこぼした。



「必要以上に踏み込みすぎ…だな」


そう。
これは公安警察のエースが考えるべき事案じゃない。
既に足を踏み込んでしまっているだろう状況とはいえ、
何かの使命の元、遂行すべき任務というわけじゃない。


自身の中の、
どう足掻いても解消できないようにも思える、
磨りガラスに覆われたようなその領域を解消したいと思うのは、
――自身の知的好奇心に基づいた、使命感に似たただの衝動だ。


降谷はそれを充分に理解していて。

相変わらず目の下にクマを携えた公安警察のエースは、
オカルト的な何かに近づきすぎたように思える思考を整えるように大きく息を吐き、
半日の間に鬼のように積み上げられた報告書に猛スピードで目を通し始めた。

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white12(プロフ) - ra-raさん» 返事が遅くなって失礼いたしました。嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。更新が不定期で申し訳ありませんが,引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。 (2021年9月24日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra-ra - こんにちは!この先どのような物語になっていくのかワクワクした気持ちで読んでます。のんびりと更新待ってます! (2021年9月19日 17時) (レス) id: f4447b9ee9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年9月19日 8時

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