選択肢_6 ページ15
「確か前に…、死んだときのことは覚えていない、と言っていたな」
『え？』
話題が変わったことで、
困った表情をきょとんとしたそれに変えて、降谷の方に顔を向けたA。
「…その時のことを、自分がなぜ死んだのかを知りたい、ということか？」
『…』
会話の端々から推測するのは降谷にかかれば造作もないことで。
覚えていないと言ったことが本当なら、そういうことなんじゃないかと問うた降谷。
そして同時に、先ほどの嫌な予感と非現実的な思考は、
もしかすると、さっき血を流して倒れていた男は彼女の死に関わっているのかもしれない、
という考えと、
ぼんやりと繋がっていた。
『んー...。違う、と思う』
「は…？」
はぐらかす訳でも無く、
曖昧ではあるものの否定が返ってくるとは思わなかった降谷。
『多分、そういうことじゃ、ない…気がする』
「…気がする、って」
やはり曖昧なAの答え。
彼女自身がいまいち考えを整理できていないというだけなのか。
先ほどやや不自然に言葉を途切らせ、だんだん困った表情になった様子も、
この会話も、どうにも分からないことばかりだ。
そして降谷は、
Aの考えを知ろうとすることは中断し、本来の”聞きたいこと”を口にした。
「…そもそも、君は何故そういう存在になったんだ？」
『えっ…と――』
1トーン深くなったような降谷の声。
運転席から自身を見つめる彼の髪にはまだ少し水滴が残っていて。
街灯とヘッドライトの光が窓の外から淡く差し込んで、
外の雨の粒も手伝ってか、
少し茶色みがかった柔らかそうな彼の金髪の上を小さな光の粒が踊っているように、見えた。
――何故、そういう存在になったのか。
それは、魂を刈るという存在を指す問いでもあり、
捉えようによっては、虚言まじりの宗教じみたそういった思考の持ち主のことを指すとも思える問いで。
確実に信じ始めている一方で、
やはり、完全には信じ切ることは難しくて。
どちらに対する返答でも構わない降谷は、
ただじっと、Aを見つめていた。
『それは…』
「…」
『選んだ――、から』
ポツリと溢れたAの言葉は、
先ほどまでの曖昧な会話とは違いはっきりとしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
white12(プロフ) - ra-raさん» 返事が遅くなって失礼いたしました。嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。更新が不定期で申し訳ありませんが，引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。 (2021年9月24日 21時) (
レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra-ra - こんにちは！この先どのような物語になっていくのかワクワクした気持ちで読んでます。のんびりと更新待ってます！ (2021年9月19日 17時) (レス) id: f4447b9ee9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：white12
| 作成日時：2021年9月19日 8時
