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桜色の決意_4 ページ8

しばらくして。


ぼんやりと目の前の建物を見上げたAは、
少し困ったように眉を寄せた。



そびえ立つのは警視庁。

今日は休日で。
警察庁なら問題ないが、
この中へ入るには許可のいる立場で。



「何か御用ですか?」


などと、警備の人間に声をかけられる始末だ。



もちろん許可を取れば入れはするのだが、
とりあえず来てみたものの、
まぁそうなるか…、と、
分かっていたように入口近くでただ、ぼんやりと敷地内を見つめていた。



塀で隔たれた警視庁の敷地からは、
もう6分咲きほどになった桜の木が、見え隠れしていた。




中に入ろうという目的が無かった訳じゃない。

でも、少し考えを纏め、
改めて決断するために、といった方が正しいかもしれない。


外川雅也は、取調室にいるのだろうか。
ここではなく留置場だろうか。

彼に聞きたいことは数えきれない。
殺意に似た静かな憤りは、消えるはずもない。


降谷や風見を問いただせば良い話なのかもしれない。
でも、
Aは、
以前彼らを追求したときのように、憤った鋭い目をしている訳ではなくて、


真剣な顔で目の前に佇む建物を、
ただ真っ直ぐに見つめていた。



「――水瀬?」




ふと、聞き慣れた声がして振り返ったA。


視界に入ったのは、
裏手の駐車場からではなく、
珍しく正面玄関から入ってきたらしい風見の姿だった。


『…風見さん。車、じゃないんですね』

「まぁ、そういう時もある。
水瀬は警視庁に何か用事か?
今日は…、事務官は休みじゃないのか」

『あ…その――』



ちょうど出くわすとは思っていなかった人物を目にし、
Aが一呼吸言葉を飲み込んだ。

そして、
首を傾げた風見に、


『あの、...お話があります』


と、静かに告げた。

降谷の安堵→←桜色の決意_3



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white12(プロフ) - やっちさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けてとても嬉しく思います。また,文章についてもお褒めの言葉を頂き大変恐縮です。お目汚しも多々あったかと思いますが,最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月18日 9時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 今晩は。大作お疲れ様でした。読み応えがあり、楽しめました。文章がうまいですね! (2022年4月14日 18時) (レス) @page35 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - pandaheroさん» こちらの作品ですが,申し訳ないのですが,諸事情により公開は控えております。読みたいと言って頂けてとても嬉しいのですが,ご容赦頂けますと幸いです。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - pandaheroさん» 本作をお読み頂き,嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます!面白いと思っていただけて本当に嬉しいです。妄想が突っ走る形ではありますが,愛の伝わる作品と言って頂き,身に余るお言葉に感激しています。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - また”逃れられない想いとともに”の公開予定はありますか?私は警察学校組の中でも松田さんが一番好きで、そんな彼がメインの物語を素敵な理解をされているWhite12さんの文章で読みたいと願った次第です。ご迷惑でしたらこちらのコメントの削除などお願いします (2021年6月6日 8時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年4月13日 18時

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