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Ep.試食の時間_12 ページ32

「…っ――」


再び衝動的な何かに動かされ、
その手を彼女の頬に伸ばしかけた降谷。

しかし、それは数センチ動いただけでピタリと宙で止まった。



喫茶店ポアロの店員、”安室透”。
店の近くの路地先。
誰に見られるか、誰に会話を聞かれるか分からない状況。
まだ――、組織の残党を狩り終えた保証はない、状況。



それは公安警察のエースである彼の有能さでもある訳だが、
こんなときでさえ、現状を冷静に把握し、
然るべき行動を取るように瞬時に働いてしまう自身の思考回路を、
降谷は少し恨めしく思った。
先ほどはそれに本能が勝ったとはいえ、
やはり自分は公安警察の人間だと、
この国を第一優先に考える人間なのだと、思い知ったかのように。



『…わ、私は…、警察庁に戻りますので。ここで...』



戸惑いゆえか、丁寧に静かに頭を下げたA。


ただ、やはり彼女もまたれっきとした公安刑事で。
恥じらいを残しまだ軽く口元を緩めながらも、
その表情を真剣なものに整えつつ去っていくAを、
降谷は静かに見つめていた。



彼のその、
繊細なガラス玉のような瞳は、
少しだけ悔しそうに、そして、心から愛おしそうに細められていた。



――(END)

あとがき→←Ep.試食の時間_11



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white12(プロフ) - やっちさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けてとても嬉しく思います。また,文章についてもお褒めの言葉を頂き大変恐縮です。お目汚しも多々あったかと思いますが,最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月18日 9時) (レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 今晩は。大作お疲れ様でした。読み応えがあり、楽しめました。文章がうまいですね! (2022年4月14日 18時) (レス) @page35 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - pandaheroさん» こちらの作品ですが,申し訳ないのですが,諸事情により公開は控えております。読みたいと言って頂けてとても嬉しいのですが,ご容赦頂けますと幸いです。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - pandaheroさん» 本作をお読み頂き,嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます!面白いと思っていただけて本当に嬉しいです。妄想が突っ走る形ではありますが,愛の伝わる作品と言って頂き,身に余るお言葉に感激しています。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - また”逃れられない想いとともに”の公開予定はありますか?私は警察学校組の中でも松田さんが一番好きで、そんな彼がメインの物語を素敵な理解をされているWhite12さんの文章で読みたいと願った次第です。ご迷惑でしたらこちらのコメントの削除などお願いします (2021年6月6日 8時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年4月13日 18時

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