世話の焼ける_7 ページ7
しかしその直後、
背中越しに、いや、手首に軽い抵抗を感じて振り向くと、
Aが、自身のスーツの袖口をキュッと掴んで俯いていた。
その姿はまるで子どものようで、
複雑そうな少し切ない表情で、フッとため息をついた松田。
「…何だよ」
『あの…、ご、…ごめんなさい』
「は…？」
『あの時、うちが…泣いてしまったから。
松田さん、困って…、え…と、あんなこと、してくれた――ってこと、ですよね』
「…」
コイツは何を言っているのか。
口には出さないものの、
その言葉を思う存分表すように松田は表情をじわりと歪めた。
“目の前で泣いていたから放っておけなかった。”
かいつまんで解釈されたような気がした松田は、
それなりに、
一応それなりに覚悟をして言葉を告げたはずだった彼は、
もう一度眉を大きくひそめて口を開いたのだが、
「あのなぁ――」
『で、でも…、あの、嫌やった...訳じゃない、です』
「…」
続けて告げられたAからの言葉に、
すっとその表情が緩んだ。
俯いて自身の袖を掴んだままの彼女の表情は上手くは見えないが、
その眉をぎゅっと困ったように歪めていることだけは、分かった。
『嫌…とか、そういうことじゃなくて…
…あの、そうじゃなくて…、寧ろ、あの時はすごく温かかったっていうか…』
「…」
『で、でも、…松田さんの顔、見ると、どうしたらいいんか分からなくなって...、
思い出して、色々…、苦しくなって…、
こんなんじゃ、捜査に支障出そうで...、だから――』
“その、…上手く、…話せなくて”
必死で言葉を紡いでいた様子のAは、
ポツリ、とそう口にしたと同時に、
松田のスーツの袖を掴んでいた手を離した。
目を覚まさない人をもう、見たくない。
そう言った自分に、
約束をするかのように告げてくれた言葉。
約束の印かのように、優しく与えられた温度。
それは、
Aにとっては、言葉になど出来ないほど温かいもので。
それでも、
自分の感情はそう思ったほど簡単には整理できなくて。
『…ごめんなさい』
心もとない声で何故か謝ってくるAに、
松田は複雑そうに口元を歪めた。
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white12(プロフ) - souさん» 嬉しいコメントを頂きありがとうございました。関西弁の夢主は初挑戦でしたが，お楽しみ頂けて良かったです。ラストの甘い雰囲気も，ご満足頂けていたら嬉しい限りです。最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月4日 13時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 最後のところ松田さんが甘くてにやにやが止まりませんでした♡関西弁の夢主設定も可愛い！ (2022年3月24日 18時) (レス) @page26 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 金糸雀さん» 本作をお読み頂きありがとうございます。お褒めの言葉，とても嬉しく思います！また，リクエストも頂きましてありがとうございます。現在執筆時間がほぼ無い状態のため，お約束は出来ないのですが，もし書けましたらエピローグ的にupさせて頂きたいと思います。 (2021年5月10日 19時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても素敵な作品でした！松田さんの言葉遣いや捜査一課の面々とのやりとりは見ていて面白かったです！これは、リクエストなのですが、夢主ちゃんと松田さんがポアロで安室さんと話すシーンが見たいです！時間が御座いましたらで構わないのでお願いします！！ (2021年4月25日 15時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ミックさん» お返事が遅くなり申し訳ありません。下記作品は、作者の都合により公開を停止しています。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月31日 19時
