エピローグ2: 知ってる ページ20
11月に入り数日が経ったある日。
『お、お邪魔します』
「…この間も来ただろうが。ンな緊張する必要もねぇだろ」
『…』
おずおずと靴を脱ぐAを、
小さなため息交じりの吐息を零しながら見つめる松田。
あの日。
資料室でお互いの気持ちを吐露してから、ひと月ほどが経っていた。
Aは今日は非番だったのだが、
松田は先ほどまで捜査だった訳で。
21時という少々遅い時刻に、彼女が松田の部屋を訪れているのだ。
同じ班で非番が重なることはまずない。
警視庁や現場以外で会おうとすれば、自ずとこういうことになるのだ。
松田の言葉から分かるように、彼女が部屋を訪れるのは2回目だ。
しかしまだ全く慣れる様子のないAを見つめて、
「――別に、取って食おうとは思ってねぇよ」
と、軽くその頭にポンと大きな手を乗せた松田。
その言葉に戸惑ったAだが、
何ごともない様子で部屋の奥へ向かう彼の背中を見つめ、
静かに奥へと足を踏み入れた。
それから30分ほどして。
「――ったく、佐藤はいちいち細けぇんだよ」
『…でも、書類の不備。最近少なくなってきたって、この間目暮警部が言ってましたよ？
佐藤さんのおかげやったりして』
ビールの入ったグラスを傾けながら、愚痴交じりの言葉を零した松田。
話していれば緊張もほぐれてきているようで、
Aがやや挑発的にニヤリと笑うと、
「Aからもうるせぇこと言われるからだろうが…」
と、彼がボソリと呟いた。
(…なんか、やっぱりこういうところ、子どもみたいやなぁ)
と、口には出さない言葉を心に浮かべてもう一度ニヤリと笑ったA。
いかにも男性の部屋という雰囲気の、シンプルな空間。
ローテーブルの上には、先ほど一緒に買ってきたでき合わせのおかずと、
Aが簡単に作ったものが数品並んでいた。
向かい合って座る2人の前には、
グラスに入ったビール。
簡単な夕食といったところだ。
『でも、今日は事件が少なかったみたいで良かったですね』
「まぁな」
『…呪われてる気がするのは気のせいやないと思ってるんですけど、
でも、やっぱり何事もないのが一番ですね』
呪われている地域。
本気ではなさそうな、
しかし、あまりにも高い頻度で事件が起こることへの苛立ちをぶつける対象が見当たらないゆえか、
そうした言葉を時々口にしていたA。
それでも、事件など起こってほしくないという気持ちがあるのは当然なのだ。
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white12(プロフ) - souさん» 嬉しいコメントを頂きありがとうございました。関西弁の夢主は初挑戦でしたが，お楽しみ頂けて良かったです。ラストの甘い雰囲気も，ご満足頂けていたら嬉しい限りです。最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月4日 13時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 最後のところ松田さんが甘くてにやにやが止まりませんでした♡関西弁の夢主設定も可愛い！ (2022年3月24日 18時) (レス) @page26 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 金糸雀さん» 本作をお読み頂きありがとうございます。お褒めの言葉，とても嬉しく思います！また，リクエストも頂きましてありがとうございます。現在執筆時間がほぼ無い状態のため，お約束は出来ないのですが，もし書けましたらエピローグ的にupさせて頂きたいと思います。 (2021年5月10日 19時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても素敵な作品でした！松田さんの言葉遣いや捜査一課の面々とのやりとりは見ていて面白かったです！これは、リクエストなのですが、夢主ちゃんと松田さんがポアロで安室さんと話すシーンが見たいです！時間が御座いましたらで構わないのでお願いします！！ (2021年4月25日 15時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ミックさん» お返事が遅くなり申し訳ありません。下記作品は、作者の都合により公開を停止しています。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月31日 19時
