金曜日のたこ焼き_2 ページ13
『うちのたこ焼き...』
「気が向いたらまた食ってやるって、…前に、言ったからな」
『…あ――』
彼が目覚める前、
あの病室でAが零した言葉を聞いていた、ということだろうか。
ぼんやりとした意識の中で、
耳に残っていたとでもいうのだろうか。
柔らかく口角を上げた松田に、
『…それは、そうですけど』
と、とりあえず小さく反論したA。
しかし、そんな言葉など意味のないように、
気恥ずかしそうに、
嬉しそうに、口元にはわずかに笑みが浮かんでいて。
「持ってきてくれたみてぇだったやつも、
...食事制限だとか面倒なこと言われて、結局食えなかったしな」
『...』
"持ってきてくれた"
そう言えば――、
と、気にはなっていたものの、
病室に置いてきてしまったたこ焼きのことを思い出したA。
ガタン。
少し気まずそうな表情のAは、
缶コーヒーを取り出した松田の背中を見つめつつ、
『足、…もう大丈夫ですか？』
と問いかけた。
数日前から、松田はもう現場に復帰していて、
思い切り走れるとまではいかないのかもしれないが、
ここ2、3日は、
歩いたり小走りで移動する姿に大きな違和感は感じなくなっていた。
「この間も言っただろうが。
もう痛みもねぇから、…そんなに心配すんな」
少し乱暴な松田の返事に、
“そうですか”と軽く頷いて、もう1つたこ焼きを頬張ろうとしたAだが、
「…やっぱり不味ぃな」
と、松田が不機嫌そうに鼻で笑ったので、
”…は？”と訝しげに眉を寄せた。
「やっぱ、たこ焼き…にコーヒーってのは…ちょっとな」
『…』
軽く口を開けたまま、
人から勝手に奪っといて、何言うて――...、
と、上手く口に出来なかったA。
彼女にとっては、
文字通り思い切り八つ当たりのようなもので、
こっちは被害者みたいなもんなんやけど…、と、
思わず苦笑いだけを零しつつ、手元のたこ焼きをおもむろに頬張った。
そして、
文句を垂れてコーヒー缶を傾けていた松田が眉を寄せて近づいてきたと思ったら、
「…ったく――」
もぐもぐと動かしていた口元に彼の大きな手、
いや、長い指先が伸ばされて、
とっさに軽く背を逸らしたA。
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white12(プロフ) - souさん» 嬉しいコメントを頂きありがとうございました。関西弁の夢主は初挑戦でしたが，お楽しみ頂けて良かったです。ラストの甘い雰囲気も，ご満足頂けていたら嬉しい限りです。最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月4日 13時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 最後のところ松田さんが甘くてにやにやが止まりませんでした♡関西弁の夢主設定も可愛い！ (2022年3月24日 18時) (レス) @page26 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 金糸雀さん» 本作をお読み頂きありがとうございます。お褒めの言葉，とても嬉しく思います！また，リクエストも頂きましてありがとうございます。現在執筆時間がほぼ無い状態のため，お約束は出来ないのですが，もし書けましたらエピローグ的にupさせて頂きたいと思います。 (2021年5月10日 19時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても素敵な作品でした！松田さんの言葉遣いや捜査一課の面々とのやりとりは見ていて面白かったです！これは、リクエストなのですが、夢主ちゃんと松田さんがポアロで安室さんと話すシーンが見たいです！時間が御座いましたらで構わないのでお願いします！！ (2021年4月25日 15時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ミックさん» お返事が遅くなり申し訳ありません。下記作品は、作者の都合により公開を停止しています。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月31日 19時
