世話の焼ける_11 ページ11
どうすれば良いかと問うてきたAヘの返事ということだろうか。
自身の感情が上手く理解できていなかった様子の彼女への、
返事だということだろうか。
敬えと言わんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべている松田。
しかしその優しい目を見つめるAは、
唇を一文字に結んで、
やはり大して怖くはない睨みを利かせているだけで。
そんな彼女の両頬をふわりと包み込むと、
松田はもう一度、柔らかいキスを落とした。
今度ははっきりと分かるその温度と、
なんとなくしっとりとした感触と、
頬から伝わる柔らかくて温かい温度。
戸惑いで心拍数が上昇し続けるAだが、
あの日とは違う、タバコの匂いと、ほんのりと苦いそのキスは、
涙が出るほど温かく感じた。
ピクリと肩を揺らして戸惑っている様子のAに、
ニヤリと笑いながらその髪を軽く撫でて、
「...ンな赤い顔してデスクに戻ってくんなよ？
またAに何かしたのかって、…佐藤がうるせぇしな」
と口にした松田。
『っ…――』
Aは上手く反論できず、
それでも負けん気の強さからか、
いや、単に困惑した感情をそう表現するしかないのか、
反射的に再び彼を睨みつけた――のだが、
松田にとっては、
頬を軽く染めたままの、瞳を小さく潤ませたままの、
どう見ても愛おしいとしか思えない表情な訳で。
やはり不敵な、それでいて柔らかい笑みを零した彼は、
“じゃ、先に戻ってるからな。”
と言い残して、資料室を去っていった。
キャビネットの前に残されたAは、
まだやはり少し不自由そうな彼の足を心配そうに見つめたとはいえ、
感情を支配するのは、もちろん、それだけではなくて。
頬に、唇に残るわずかな温度を感じながら、
しばらくほんの少し苛立った様子で困ったような顔をしていたものの、
先ほどの松田のように、ストンと心の中の何かが落ちたかのように、
Aもまた、
少しずつ、じわりと穏やかな愛おしそうな笑みを零したのだった。
“A”
彼の口から零された自身の名前が、
ぼんやりと、脳裏に響いていた。
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white12(プロフ) - souさん» 嬉しいコメントを頂きありがとうございました。関西弁の夢主は初挑戦でしたが，お楽しみ頂けて良かったです。ラストの甘い雰囲気も，ご満足頂けていたら嬉しい限りです。最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月4日 13時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 最後のところ松田さんが甘くてにやにやが止まりませんでした♡関西弁の夢主設定も可愛い！ (2022年3月24日 18時) (レス) @page26 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 金糸雀さん» 本作をお読み頂きありがとうございます。お褒めの言葉，とても嬉しく思います！また，リクエストも頂きましてありがとうございます。現在執筆時間がほぼ無い状態のため，お約束は出来ないのですが，もし書けましたらエピローグ的にupさせて頂きたいと思います。 (2021年5月10日 19時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても素敵な作品でした！松田さんの言葉遣いや捜査一課の面々とのやりとりは見ていて面白かったです！これは、リクエストなのですが、夢主ちゃんと松田さんがポアロで安室さんと話すシーンが見たいです！時間が御座いましたらで構わないのでお願いします！！ (2021年4月25日 15時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ミックさん» お返事が遅くなり申し訳ありません。下記作品は、作者の都合により公開を停止しています。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月31日 19時
