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ガキかよ_5 ページ7

「…甘えてんじゃねぇぞ」

『――――――は?』

「ったく、…ガキ、かよ」


Aにとっては、
突如、身に覚えのない、そして分かりやすい八つ当たりをぶつけられたようなもので。


チョコレートがまたも溶けそうになっていたくらいで、
正直そこまで言われる筋合いなどないのだ。


しかし、
通常運転の悪態めいたセリフとは裏腹に、
松田の目がどこか優しい気がして。

休憩室で言葉を交わしたあの日のように、
やっぱり、優しい気がして。



Aは、
反論しようと開きかけた口を閉ざし、
戸惑ったように精一杯眉を寄せて首を傾げた。






そして、

“警察官を目指す人間は大なり小なり過去があるものでしょう?
それが、その動機が、警察官たる自分でいられる理由になるというか”

澤村が言っていたことをぼんやり思い出した松田。



「ま、…やっぱりガキだってことだな」

『…は?何なんですか。何回もそうやって――』



そうじゃないことは、
もう、松田も充分過ぎるほどに分かっていて。

やりきれない気持ちになりかけた彼は、
いつものようにそんなセリフを口にすることしか、出来なかっただけなのだ。



葛藤に苛まれていたようだが、
カッコいい一課の刑事を目指そうと思っていると、
先日、そう言ったA。


意味不明な悪態に対し、
やや本気で反論しそうになっている彼女にニヤリと笑うと、
松田はコーヒーを飲み干した。




たこ焼きは既にペロリと平らげられていて。

空になり袋に詰められたパックに、
少し安堵したように、


すっかり影の消えたAの目元に、
安心したように優しげに目を細めると、
そのまま足早に休憩室を去ろうとして、
彼女の目の前に置かれた袋を奪うように掴んだ松田。



『え――、あ…』



そして、戸惑うAを他所に、
それをゴミ箱に捨てると、そのままオフィスに戻って行った。




『………え?』



あの発砲事件から。

病室で自分が口を開いてから。

彼に怒鳴られたあの日から。

仮眠室で言葉を交わしてから。


自分自身、少し心を許せるようになっている気もしていたAだが、
やはり、彼の掴めない言葉に、
その行動に、しばらくポカンとしていたのだった。

関西弁で→←ガキかよ_4



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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ッ文章力が有りすぎる!読みやすくて話に引き込まれちゃいます!台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい!更新楽しみにしています! (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年7月20日 20時

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