それはまるで_9 ページ35
「...言っとくけどな。
お前もあん時みたいに無茶したら、...今度はタダじゃおかねぇからな」
『...』
続けて零された脅し文句のような彼のセリフ。
しかし、ぼやけた視界ではその表情はうまく掴めない。
わずかに唇に残った感触に戸惑うAには、
その声がとても優しいものだということしか、理解できなかった。
そして、
“またうるせぇこと言われんのも面倒だからな”
渋々と言った様子で、
再びベッドに横たわる松田。
目を閉じてしまった彼に、
『…あ…、松田さんの意識が戻ったこと…、医師に、…伝えてきます。
それと――、私は…一課に、戻りますね。
一課の皆さんにも、…伝えてきます』
少し困惑した様子でそう告げると、
Aは病室を出て行った。
病室の外で。
少し乱雑に横たわった白いシーツの上で。
いつぞやのように、
お互いがよく似た表情を浮かべていたことは、
やはり知る由もなかった。
病室にほんのり漂うソースの匂い。
ぼんやりと起き上がった松田は、
見慣れた袋がベッド脇の床に落ちていることに気づいたものの、
身体の痛みからそれを手にすることはまだ叶わなくて。
つい先ほど。
目覚めたばかりの自身の視界に映ったAの姿が、
ぼんやりと思い出された。
そして、
ふわりと香る匂いに、どことなく懐かしいような落ち着くようなそんな気がして、
自分自身の行動にまだ戸惑いが消えない中で、
松田は、小さな笑みを浮かべていたのだった。
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white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (
レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ｯ文章力が有りすぎる！読みやすくて話に引き込まれちゃいます！台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい！更新楽しみにしています！ (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月20日 20時
