非番の資料室 ページ19
数日後のある日。
「なんで俺が高木の代わりに、なんだよ。ったく…」
ブツブツと独り言を呟きながら資料室に足を踏み入れた松田は、
軽く睨むように左右のキャビネットに視線を向けながら、奥の人影に目を留めた。
「は…?」
その視線の先には、
奥のキャビネットの前に立ったまま、
分厚いファイルを捲っているAの姿。
松田が、
毎度のように眉を寄せたのには訳がある。
今日、彼女は非番だからだ。
“ Aは今日非番だし、私、これから生活安全課に確認したいことがあるし。
で、高木くんはさっき科捜研に証拠の確認に行ってくれたから。
代わりに、さっき目暮警部と伊達さんが話してた2年前の事件について、
捜査資料確認しておいてくれる?”
先ほど佐藤に言われた言葉を思い出し、
松田は無意識に苦笑いをしながらAに近づいた。
「何でいんだよ、お前」
『え…?』
静かに近づいてきた人影と、同時に香ったタバコの匂いにハッと顔を上げたA。
「今日非番なんじゃねぇのかよ」
『あ、…松田さん、捜査資料探しに来たんですか?』
「まぁ、な。
…っていうか、だから、非番なのに何でここにいんだよ。
緊急の事件はねぇはずだけどな」
松田が探しに来ている捜査資料は、
2ヶ月前に起きた杯戸町での強盗未遂事件について、
犯人たちの余罪の可能性が浮上したため、情報を洗い直しているところで。
今日発生した事件という訳でもなく、
Aが呼び出されたということはないはずなのだ。
『えっと…』
「…まさか、まだ――」
『あ、…ち、違いますよ。あの事件、…颯太の、事件を調べてるんじゃなくて』
「…」
『その、…非番って言っても、…掃除とか洗濯とか…そういうのが終わったら、
あと、何して良いか分からへん…っていうか』
「は?」
『あ、…そういうことだけじゃなくて、
やっぱり、…これまでの事件の捜査資料をある程度頭に入れておくんは、刑事として基本でしょ?』
松田に責められているようでやや不快感も滲ませつつ、
Aはニヤリと軽く口角を上げた。
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white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ッ文章力が有りすぎる!読みやすくて話に引き込まれちゃいます!台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい!更新楽しみにしています! (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2020年7月20日 20時