検索窓
今日:3 hit、昨日:18 hit、合計:126,153 hit

不機嫌な2人 ページ16

それから数日して。


「――そうだよな。確か、科捜研に頼んでたはずだけど」


『うん。それと今朝、三課からも去年の事件のこと聞いてきたんやけど、
やっぱり間違いなさそうやわ』


「そうか。じゃあ俺は――」



エレベーターから降り、何やら捜査について話しながら一課のオフィスへ戻っていくのは、
高木とAだ。



「あ、お疲れ様です」

『お疲れ様です』


2人が軽く会釈をしたのは、同じ一課の三島だった。


三島は一課に来て1年と少しが過ぎた程度だ。
彼の方が年上だが高木の方が先輩であって、
Aのことで詰め寄ってくる一課の面々の中に彼は入っていないのか、
高木が特に引きつった表情を浮かべるわけでもなく。


「お疲れ様です」


そして、そのまま高木と歩いていくかと思ったAだが、


『あ、この間はありがとうございました』


と、立ち止まって三島にお礼を口にしたので、
高木は”じゃ、先に警部に報告しておくな”と、
こっそりAに告げてオフィスに戻っていった。


軽く腰を曲げてAに耳打ちするような仕草は、流れるようなもので。
同期という間柄、こうしたことはしょっちゅうだということを示していた。



「いや、別に大したものじゃ…。
この間、現場で怪我…してたし、
退院したお祝い…ってほどのものでもないんだけどさ」

『…』

「ほら甘いものって疲れが取れるって言うし、
…気に入ってくれたなら良か――」

『…あ』


少し言い澱みながら、頭上から言葉をかけてくる三島に、
いまいち掴めない表情を向けていたAは、
彼の身体を通り越して、その先に目を留めた。


「…え?」


気になって三島が何気なく振り向けば、
視界に入ってきたのは、休憩室から出てきた松田の姿。

そして、Aに視線を戻せば、
何故かなんとなく不機嫌そうに見えて、不思議そうに首を傾げた。


彼女が、
自分が渡したチョコレートの最後の1つを奪われたことなど、
全くもって知る由もないわけで。

不機嫌な2人_2→←最後の1つ_3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (133 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
188人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ッ文章力が有りすぎる!読みやすくて話に引き込まれちゃいます!台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい!更新楽しみにしています! (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:white12 | 作成日時:2020年7月20日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。