最後の1つ_2 ページ14
松田とて。
澤村から話を聞かなければ、
気がかりを残したまま、特に追求せずに終わっていたのかもしれない。
使えねぇ新人だと突っぱねてきたこと。
毎週食べているたこ焼きを、どこかバカにするようにしていたこと。
何かと、ガキだとバカにしてきたこと。
罪悪感でもあったというのか。
あの日。
病室で静かに口を開いた彼女に、
そこから零された話に、
何故か無性に苛立ちを覚えていたのは事実だ。
でも、
何も言わずに、明らかに”大丈夫”ではない様子で、
何事もなかったように元気に捜査を続けていた彼女に、
ただ、苛立ちをぶつけたかったわけじゃない。
仮眠室で涙を零した彼女に、
ただ、同情したわけじゃない。
その涙を拭いてやりたかった訳でも、
抱きしめてやりたかった訳でもなくて。
自分の中の罪悪感など、
そんなものがあったかどうかなど、
それはどうでも良くて。
ただ、傍にいてやりたいと、
そう、思ったのだ。
いや、
“いてやりたい”んじゃない。
ただ、松田が、
彼女の傍にいたいと思っただけだった。
「…おい、咲野――」
松田が軽く肩に触れると、
Aはビクリと大げさなほどに身体を震わせて、
体勢を思い切り崩し、
椅子の背もたれからはみ出すほどにその背を反らせた。
起こす必要はなかったのかもしれないが、
松田がその肩に触れたのには、
何か意図があったのだろうか。
「お、おい――」
『ん、んー…』
その肩を支えられているのに気づいているのか否か、
『あ…』
と、Aがぼんやりと開いた目で松田を見上げた。
『あれ...？松田さん。
...えーっと、…戻ってたんですね。おかえり、なさい』
「…は？」
おかえりなさいなどと口にしたAに、
寝ぼけているのかと、少し訝しげな顔をした松田。
「…ったく、手帳広げたまま寝てんじゃねぇぞ」
『あ...、そうでした。盗まれたら大目玉ですね』
Aは、ハハッと苦笑いをしながら、
シパシパした目をしゃっきりさせるため、強めに瞬きをした。
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white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (
レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ｯ文章力が有りすぎる！読みやすくて話に引き込まれちゃいます！台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい！更新楽しみにしています！ (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月20日 20時
