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タバコの箱_2 ページ2

『じゃあ、うちは昨日高木が持ってってくれたあの映像、
解析終わってるか聞いてきます』


そう言って小走りにオフィスを出ていくA。

捜査支援分析センターに向かったのだろう彼女を軽く首を傾げて見つめた松田は、
受け取ったタバコの箱にぼんやり視線を落とし、
自分のデスクへ向かった。




「お礼とお詫び...って。
怒鳴りつけたのは松田くんの方なんだから、謝るのは逆な気もするんだけど」

「…うるせぇよ」


デスクから嫌味を口にした佐藤だが、
何やら少し楽しそうに松田を見つめている。


「それ、いつも吸ってる銘柄?」

「まぁ、な」

「Aって、何だかんだ言って、松田くんのこと良く見てるのね」

「…」


よく見てる、などと、
まるで指導係はどっちなのだと言わんばかりのセリフだ。

しかし、彼女の前でタバコを吸ったことはおそらく無いと記憶しているのだが、
気に入っている銘柄のタバコの箱をお詫びの印として渡してきたAに、
嫌な気持ちがするはずもなく。


「怒鳴りつけたのはどうかと思うけど、でも昨日の仮眠のおかげもあるのかしら。
ちょっと元気になったみたいだしね。
昨日の夜もよく寝ちゃいましたって、さっき言ってたし。
それに..."ご迷惑おかけしました"って、私まで謝られちゃったわ」


もう、とっくに本人の姿は見えなくなっているオフィスの入り口を、
安心したように笑みを浮かべて眺めている佐藤。

その口ぶりから、
仮眠室でのことは伝わってはいないのだろうと、松田は思った。

本人は隠すつもりはないらしいとはいえ、
自ずと、弟や両親の話にも繋がるわけだ。
自分から進んで口にしようとは思えないだろうことは、
察してはいたのだが。



そしてふと、誰もいない伊達のデスクにちらりと視線を向けた松田。


気心知れた同期だ。
だからこそ、こうした場面を見られるのは、
昨日のことも合わさって、仏頂面がお得意の松田といえどもやはり気恥ずかしいもので。

(そういや、今日はあいつ非番だったな…)

と思い出した松田は、
彼がいないことに、少し安堵した。




オフィスの端のデスクでは、


“また何か問題を起こしたんじゃないだろうな…”


と、昨日は非番だった白鳥が、
少し苦い顔で2人を見つめていたのだった。

ガキかよ→←タバコの箱



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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 紅月さん» お読み頂いているだけでもありがたいのに、嬉しいコメントを頂けて、特に台詞や情景についてそう言って頂けて、本当にありがとうございます。夢主は脆さもありつつ芯のある人物を描いているつもりなので、伝わっていて嬉しいです。後少しですが、ぜひお楽しみ下さい。 (2020年7月31日 23時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 文章力が…ッ文章力が有りすぎる!読みやすくて話に引き込まれちゃいます!台詞や情景描写の言い回しがめっちゃ好きです。話の展開、過去の話、主人公の決意諸々…色々が本当に格好いい!更新楽しみにしています! (2020年7月31日 18時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年7月20日 20時

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