束の間の乾杯【F】_23 ページ44
伊「…早いもんだな。
俺と松田は同じ部署だが、あ、お前と諸伏も、か。
萩原は萩原で、数年間、松田と爆発物処理班を引っ張ってた訳だしな。
...今も副隊長として。
ま、それぞれ皆ここまで突っ走ってきたのは、同じなのかもな」
降「当然だろ。
動機や今の立場は違うにせよ、
警察官としてやるべきことは、そう大きく変わるはずもないからな」
伊「相変わらず固いな？ゼロは」
降「でも、確実に変わっていることも、…あるけどな」
伊「そりゃ...そうだろ」
それぞれの立場も然り、
大きな志は変わらないにしても、警察学校時代とは違うのだ。
あの頃とは。
考え方も、選ぶ道も、時と共に少しずつ枝分かれしていくのは必然で。
伊「でも、やっぱり結局は1つに繋がってるって信じてぇけどな。
警察官としてやるべきことってのは」
降「…当然だな」
公安という立場上、最も葛藤すべきその言葉だろうが、
すんなりと零された降谷の言葉に、
伊達はニヤリと笑みを浮かべていた。
先ほども、目の前の人物からストレートに零されたその言葉に。
降「伊達も、親父さんみたいな刑事に...なったんだろうしな」
伊「ハハッ。どうだかな」
警察学校時代、父親に対してコンプレックス、いや、憤りがあった伊達は、
彼らによって、その誤解を解くことが出来た訳で。
降谷の言葉に、当時を思い返すように懐かしそうな笑みを浮かべた伊達。
そして、
軽く首を傾けて彼に視線を向けた降谷は、
降「とりあえず、
…家族というものを背負っていくこれからの伊達に――」
“乾杯”
と口にする代わりにグラスを差し出した。
伊「あぁ。…ありがとな」
2人の視線の先のソファでは、
松田、萩原、そして景光が気持ち良さそうに眠っていて。
そう言えば警察学校時代にも、
こっそり寮でこんな風に酒を飲み交わしたこともあったな、と思い返す伊達。
そして、目の前のラグの上。
いつの間にか誰かのポケットから落ちたらしい警察手帳にふと気が付いた。
(鬼塚教官に見つかったら大目玉じゃすまないところだぞ...)
と、懐かしい目をする伊達の視線の先で、
開かれたその警察手帳の旭日章が、
部屋の照明に照らされてキラリと光った。
それはまるで、
5人の絆を、そして、彼らのこの先を――示しているかのようで。
警察学校時代のあの日々を彷彿させるような、
どこか懐かしく、少し騒がしく、そしてどこか優しい束の間の時間は、
こうして幕を閉じたのだった。
――(END)
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white12(プロフ) - チッピとデーラさん» 原作をねじ曲げているのは心苦しいですが，ifの世界で警察学校組の皆が笑っていたら...という妄想全開の作品ですが，Fは私自身時々読み返してニンマリする作品となりました (自画自賛ですみません...)。少しでも心に残る作品になっていましたら，この上ない喜びです。 (2021年6月7日 20時) (
レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - チッピとデーラさん» 本作をお読み頂きありがとうございます！シリーズを全部読んでいただけたなんて，作者の勝手な妄想で繰り広げられた世界でしたが，気に入って頂けて本当に嬉しいです。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
チッピとデーラ - こんな未来が原作であったら…と思ってしまうほど、文章も情景描写もお上手で、引き込まれました。こんなに素敵な作品を完結してくださり、本当にありがとうございます！長文失礼しました。作者様の他の作品も読んでみようと思います！これからも頑張ってください！ (2021年6月3日 22時) (レス) id: 53b6430389 (このIDを非表示/違反報告)
チッピとデーラ - 最後のFで、5人が集まって女子会ならぬ男子会をしているのも、胸が熱くなりました、、、降谷さん達が恋人、想い人にどんな印象を持っているのかも知ることができて、伊達さんのお父さんキャラも見れて、ほっこりしました。 (2021年6月3日 22時) (レス) id: 53b6430389 (このIDを非表示/違反報告)
チッピとデーラ - はじめまして。Rainから今作まで全部読みました！警察学校組大好きなので、4人(伊達さん入れて5人ですね)が生存していたら、という数あるお話の中でも特に気に入ったシリーズでした。私は特に最初の松田さんのRainと、ヒロさんの4869がお気に入りです！ (2021年6月3日 22時) (レス) id: 53b6430389 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月5日 13時
