Words (4)【名探偵コナン】

Words ページ45

それから数日が経った。



『ありがとうございました！また、いらしてくださいね』



5月になり、改装まで1ヶ月を切った相原書店。


日差しはあるものの、
今日は少し涼しく、風が気持ちいい。


軽く髪をなびかせて、Aは1人の客を見送った。




『今日はちょっと埃っぽいし、風もあるし。
もう一回掃除しとこうかなぁ』



店の奥から箒とチリトリを取り出すと、
Aはふと、ぼんやりした様子を見せた。


あの日から、安室とは顔を合わせていない。

翌日に警視庁に事情聴取というものに行ったものの、
安室と顔を合わせることはなく。店に現れることもなかった。




倉庫作業に行く途中、
そして、昨日はお休みだったため、
何度か早朝の堤無頭川へ行ったAだが、彼と会うことは、なかった。
目的は、朝日を見に行くため――だったのだが。




向かいの本棚が目に入り、

Aの頭の中で、あの日のことが思い起こされた。




八神に向けられた冷たい目。
その後の事情聴取で伊達刑事から聞いた、
いくつかの事故は、彼が依頼した犯行だったこと。

身勝手な理由で、安室に怪我をさせたことへの苛立ちと、
自分のせいでという罪悪感。



ただ、それ以上に、
“彼”に、その温度にふわりと包まれたことで、
綺麗な所作で、緑茶を口にしていた彼と、
何か少し葛藤しているような、柔らかい笑みを浮かべる彼と言葉を交わしたことで、
あの日の記憶は大きく上書きされていた。




ふと自嘲気味にため息を零しそうになったAだが、
目の前の”改修工事のお知らせ”の張り紙を目にすると、


『頑張らないと、ね』


と、切り替えるように笑った。









そして、しばらく店先を箒で履いていたAは、

「お疲れ様です」

聞きなれた声に、”あ”、と口元を緩めた。


『久しぶりね。』


ニコリと笑みを返したのは、


鈴宮だった。

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