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ほろ苦い栗ようかん ページ33

そして、相原書店の中では。


『あの…えっと――』


すぐ側にある、
いや、頬に触れる柔らかい髪に戸惑い、
Aが高速で瞬きをくりかえしていた。


ふわりと、自身の体を包み込んだその褐色の腕は、
文字通り、ふわりとしたもので。


押し返せばおそらく簡単に離れるだろうそれを、
Aは押し返すことは出来なくて。


恐る恐る横を見れば、
その柔らかい髪の下に、細められた綺麗な蒼い目が見えた。



『あ、安室さん…?えっと…』

「…あ、すみません」


そっと離れていく安室は、
どこか申し訳なさそうに笑っていて。
Aはつられるように眉を寄せた。

ほんのりと、柔らかい温度が離れていくのが、
少しだけ、寂しく感じた。


「本当に無事で、良かったです」

『あ、…助けてくれて、本当にありがとうございました。
あの、どうして?近くに…お仕事、でしたか?』

「いえ。たまたま――、...じゃなくて」

『…?』




たまたま近くを通りかかって。
たまたま伊達刑事と会って。


いつもなら適当に軽く交わす会話だ。


私服姿の今日は、
特に何を繕う必要もない。

しかし――。




「さっきの伊達刑事からも話を聞いていたんですよ。
あの事故、捜査一課が色々調べているので。
…それで、僕も気になっていたので。
あの事故について、探偵として調べていたんです。
それで、八神のことを――」

『…そうなんですか。
それで、伊達刑事と一緒にここに…』

「八神のことは、警察がきちんと調べてくれるはずです。
相原さんも、…この間のように事情を聞かれると思いますが…」


あの事故、…事件では、降谷が被害者だ。
安室として事情聴取を受けたこともあり、
伊達と、一課の捜査について話をしていたのは嘘ではない。


少しだけ気遣うように話しかけてくる安室に、
“分かりました”と、小さく笑みを浮かべて返事をしたA。




“今の”警察を恨むというのは違うと思うので。


そんなことを言っていたA。

先日を事情聴取の受けていたとはいえ、
しかし、やはり警察には抵抗があるだろうと、
安室は無意識ながらに配慮したのだ。

しかし、特にその必要もなかった様子のAの笑みに、
少し、驚いていた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» 少々複雑な話になった気もしています。降谷が絡むとどうもそういう話になるようで...(苦笑)。本作も、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 互いに全く違うような感じですが、実はかなり近しいところもあるというか、本質的な部分を描きたかった本作でした。ちょっと切ないと言うか本質的に互いが抱える葛藤をさらに抉るような部分もありつつ、理解しあっていく(おもに降谷が、ですが)という... (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 今更ながらの返信ですみません...。いつもコメントありがとうございます!2人の微妙な関係と、なぜかお互いに心地よさを感じるという矛盾のような必然性のようなそういったところが伝わっていてとても嬉しく思います。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*普段時間の針が穏やかに進んでゆっくりなのに突然リズム乱して刻みだし早さ一定してない相原さんと普段寸刻を争い生きている降谷さん。2人一緒だと時空が歪みそうなのに何故か心地良くて...撒き塩での出会いが懐かしくしんみりします*。 (2020年7月6日 4時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - りんさん» お目汚しになった箇所も多いと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。また、他の作品でもお会いできましたら幸いです。 (2020年7月5日 0時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年6月17日 21時

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