Words (4)【名探偵コナン】

降谷零という男_3 ページ32

一方。

八神を乗せた車の中で、ハンドルを握っている伊達は、
後部座席に乗せた八神、
そして、その横で彼の腕を掴んでいる高木の姿をミラー越しにちらりと見ながら、
何とも言えない表情を浮かべていた。



“すぐに杯戸町XX丁目の相原書店に来てくれないか”

数分前に、同期である降谷零から掛かってきた電話。
いや、ディスプレイに表示された電話の”主”は、もちろん安室透なのだが。


例の事故。
ある人物が犯行を教唆した可能性がある。


そう短く告げて切れた電話。



とりあえず、と車に乗り込んだ直後。
送られてきたメールには、
彼が独自で調べたのか、八神柊という人物の情報と、
傷害教唆の疑いがある旨が示されていた。


おおよその状況を理解した伊達は、
とっさに高木を同行させ、現場に向かったのである。

あの事故については一課が追っている。
松田に連絡を、と思ったのだが現場に出ていた訳で。





電話が切れる直前、
“お、おい！！”と、何のことだか問いかけた伊達に、
降谷が何か呟いた気がした。


“あんなやつに、壊されたくはないからな”


そう、言っていた気がした。





捜査一課は、例の事故を捜査していたとはいえ、
犯行の疑いがあるノエスワーレのメンバーを取り調べ中とはいえ、
犯罪教唆の疑いがあるなどとは全く考えてはいなかった。


嘘や偽りの証拠を使ってでも、
犯人を追い詰めるグレーのやり方が常套手段の公安。

しかし、安室透が”捜査一課の刑事”である自分を頼ってきたことから、
伊達は、送られてきたメールの信ぴょう性を信じて疑わなかった。



公安の刑事、ではなく、
伊達を頼ってきたのだから。


それは、ゼロに所属する降谷零という人物としてではなく、
伊達と、そして、あの3人と密な時間を共に過ごし志を同じくした、
降谷零という1人の男としての行動だと、すぐに理解したからだ。




「…ったく、あとで詳しく聞かせて貰うからな。ゼロ」




あまり口にはしないそれ。
しかし、松田や萩原、そして景光が口にする彼の呼び名を呟き、
伊達はニヤリと笑った。



「…伊達さん？何笑ってんですか...？
...それよりこの男 ――」

「.....お前にも詳しく聞かせて貰うからな。八神」


適当な説明を受けただけで、
伊達に無理やり連れてこられたような高木がポカンとしている中、
伊達はミラー越しに八神を睨みつけたのだった。

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