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ぼんやりとした上司 ページ23

「大丈夫ですか?降谷さん」

「疲れてるんじゃないか、ゼロ?今日はちゃんと帰った方が――」


警察庁に戻った降谷は、
風見と景光に心配そうな顔を向けられていた。


報告を受けつつ、どこかぼんやりとしていたせいだ。


「いや、問題ないさ。
続けてくれ。
例の案件だったな。
それと、先日の事故について――」





ぼんやりしていた理由はもちろん、今朝のことだ。


真実を追求しなくて良い、などという考えは毛頭ない降谷にとって、
Aの言葉は理解しがたいことでもあった。
しかし、
それを突きつけることに意味があるとは思えないのも本当だった。


自身が警察官を目指した理由も然り、
大事な人間が殺されたのだとすれば、
それを知らなくて良い、などあり得ない。

しかし、一番大事な人間がその事実を知らせないようにしていたとしたら。

守りたいものは、
他人の価値観では図れないのだ。





Aに、何かを伝えるつもりがあったわけじゃない。
しかし、知る権利があるのではないかと、
いや、勝手に結びつけていたのは降谷のほうだったのかもしれない。


笠間の言葉からも、
あの事故は、協力者であった相原 悟、Aの父親を守れなかった公安警察の失態だ。

そして、協力者と恋仲になった高遠 栞もまた、
公安警察としては隠しておきたい事実だったのだろう。
彼女はそうなる以前に、警察を辞職していたようだが。

そして、高遠栞の両親はともに警察官だったようで。
彼女の生前にすでに殉職していたその人物たちも、
何か公安に関係のある人間だったのかもしれない。









本当は彼女がどこまで知っているのか。

降谷はただ、それを知りたかったのだけかもしれない。


ただの事故で命を落としたわけじゃない。
それは、…警察の失態なのだと、謝罪の意図でもあったというのか。
それは、――ありえない。




「――報告は以上です。
例の男の件は…」

「それはこちらで対処する。風見は引き続き、あのBarの監視を頼む。」

風見に指示を出した降谷に、
景光が心配そうに口を開いた。


「ゼロ、仮眠室空いてたぞ?やっぱり少し、休んだ方が良いんじゃねぇか?」

「…いや、大丈夫――、
…そうだな。10分後に戻る。」

「分かった」
「は、はい」

景光に言われたことが効果があったのか、
珍しく、素直に仮眠室に向かった降谷。


“10分って…あんま意味ないだろ”

と、景光がぼそりと呟くと、
風見もまた苦笑いを零したのだった。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» 少々複雑な話になった気もしています。降谷が絡むとどうもそういう話になるようで...(苦笑)。本作も、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 互いに全く違うような感じですが、実はかなり近しいところもあるというか、本質的な部分を描きたかった本作でした。ちょっと切ないと言うか本質的に互いが抱える葛藤をさらに抉るような部分もありつつ、理解しあっていく(おもに降谷が、ですが)という... (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 今更ながらの返信ですみません...。いつもコメントありがとうございます!2人の微妙な関係と、なぜかお互いに心地よさを感じるという矛盾のような必然性のようなそういったところが伝わっていてとても嬉しく思います。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*普段時間の針が穏やかに進んでゆっくりなのに突然リズム乱して刻みだし早さ一定してない相原さんと普段寸刻を争い生きている降谷さん。2人一緒だと時空が歪みそうなのに何故か心地良くて...撒き塩での出会いが懐かしくしんみりします*。 (2020年7月6日 4時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - りんさん» お目汚しになった箇所も多いと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。また、他の作品でもお会いできましたら幸いです。 (2020年7月5日 0時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年6月17日 21時

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