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堤無頭川の朝焼け_4 ページ38

『もうずいぶん経ってるんですけど、
やっぱり遺品を見ちゃうと、色々思い出してしまって。
すみません。…変な話、してしまって。』

「いえ。こちらこそ、立ち入ったことを聞いてしまって。...それで、朝日を見に?」

『それも、ありますね。
でも、ここで朝日を見るのが好きなのは本当なんです。
仕事に行く前も、ここで時々こうやって。』

「仕事?」

“あ”、と、軽く口元に手を当てるA。
あまり大っぴらに話せることではないからだ。


『…実は、朝の数時間、
ちょっとだけ副業を…』

「そうだったんですね。
誰かに話したりしませんし、別に、悪いことをしているわけじゃないと思いますよ?」


安室のフォローに、Aは目を細めて軽く頭を下げた。


『ここから見る朝日、とても綺麗ですよね。
祖母ともよく一緒に見ていたんですけど、
じわりと、空全体が明るくなっていく景色が好きなんです。』

「お祖母様と、ですか。
リセット出来る…というのは、もしかしてお祖母様の言葉、ですか?」

『フフッ。そうだった、かもしれません』


アンアン!と、少し遠くでハロの声が聞こえる。


懐かしそうに口角を上げるAの隣で、
安室もまた柔らかく口元を緩めた。




しばらく口を噤んだあと、

『…あの書店は、祖父母と暮らした、私が育った家なので、
改修して、…大事に、していきたいんですよね。』

と、ポツリとこぼしたA。


「あの、…ご両親は?」

『私が小さい頃に事故で亡くなったみたいです』


気を遣うように問うた安室に、Aが困ったような笑みを浮かべて答えた。


「事故、ですか」

『私はほとんど覚えていないんですけどね』





相原書店が彼女の祖父母と一緒に住んでいた大事な家だということは、
以前にも聞いていた安室。
しかし、Aからは、祖父母の話を聞くことはあったが、
両親について聞いたことはなかった。

そういうことか、と、
安室は少し複雑な顔をした。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - リンさん» すごく嬉しいコメントありがとうございます!励みになります。劇的なストーリー展開ではないので物足りなく感じるかもしれませんが、そのように感じて頂けたのは本当に嬉しいです。話はもう少し続きますがお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月23日 21時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
リン - こう、じわじわと距離が深まっていくお話は中々夢小説にないので、個人的にとても嬉しいです。内容も面白くって読んでいて飽きない……すごい。更新楽しみにしてます! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 73f2c7a15b (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - アイスあるさん» 嬉しいコメントありがとうございます!全体的にほんわかするストーリーを目指したつもりなのでそう言って頂けたら嬉しいです!これからもお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月16日 18時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - あやなさん» 本作をお読み頂きありがとうございます。他の作品も読んで下さったとのこと、すごく嬉しいです!更新頻度はややマチマチですが、今後もお楽しみ頂けたらと思います! (2020年5月16日 18時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - 心が温かくなります!更新頑張ってください! (2020年5月16日 16時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年5月15日 23時

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