Words (2)【名探偵コナン】

謎の言葉たち_6 ページ33

『あ、ありがとうございました…！』


店を去るその客をぼんやり眺めるA。


同じ状況。
似たようなセリフのやりとり。

思い返すのは、あの日の光景だ。
安室が、同じようにPCの不調を直してくれた、あの時の。


そして、ふっと頭に浮かんだ、
PCを操作する彼の背中越しに、
至近距離で画面を眺めたあの光景に、
Aは戸惑った様子でふるふると頭を振った。


『…で、でも、さっきのお客さん。
お医者さんとか薬剤師さんとか、そういう人かと思ったけど…、
パソコン関係の仕事をしている人なのかな…。
安室さんみたいに、あっという間に直してくれたなぁ…』


気を取り直したように独り言を呟くA。


『なんか、ふわっとした雰囲気なのに、
あんなに早くキーボード打ってる姿、…別人みたいだったな』


新しいものに変えた方がいいとまたも同じことを言われたとはいえ、
あの日と同じように、”しばらくは”スムーズに動くようにと、
あっという間に直してくれた名前も知らない客。




Aは知らない。
先ほどの客が、
綾倉結衣という、”安室”と、いや、降谷と、ある意味深い繋がりのあった人物だということを。



『…次に来てくれたときに、お礼、渡さないとなぁ』


代金は既に受け取っていたため、
お礼の意味でそれをお返しするのも失礼に当たると思ったわけだ。
かと言って渡せるような菓子も、あいにく今日は家には無く。



Aはどこか暖かな気持ちで柔らかく息を吐くと、
スムーズに動くようになったPCで、新書の登録を再開したのだった。

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