紫煙の匂いと白い花_3 ページ27
「単に同じ名前なのか、
…なんらかの影響を受けたか、残党かなんらかの繋がりのある人物が再び作り上げた組織か。
いずれにしても、やり方はかなり違っているようだが。
…その裏を調べるのもお前達の仕事なんじゃないのか」
「…分かっています。
ただ、当時、笠間参事官は公安警察にいらっしゃいましたよね。
何かご存知なのではと思いまして」
黒田から、
そして笠間本人から、
10年前まで彼が公安警察にいた話を聞いた際、
降谷は少し気になってその経歴をざっと調べたのだ。
警視庁公安部で数年を経た後、
公安警察 “ゼロ”へ昇進した男。
ノエスワーレが事件を起こしていた当時は、
彼は公安警察で、いわば降谷と同じような立場にいたはずだ。
「…当時のメンバー、幹部クラスの奴らは根絶やしにしたはずだ。
細々と、裏で思想が受け継がれていた可能性は払拭出来ないが、
今更、残党という可能性は低いと思うがな。
単に、名前を勝手に引き継いだ連中かもしれん。」
「…」
ふぅ、と再び紫煙を吐き出す笠間の横で、
降谷はもう1つ、先ほどから気になっていたことを口にした。
「…その花は――」
笠間の足元。
屋上の隅に小さく置かれていたのは、
白い1輪の花だった。
「あぁ。ちょっとな」
「もしかして今日は、どなたかの…、命日ですか」
ふっと空を仰ぐような仕草を見せる笠間。
「…そうだな。まぁ、手のかかる部下だったやつのな」
「部下、ですか」
“まぁ、奴にも色々あったようだからな”
黒田のセリフを思い出す降谷。
(…殉職した、ということか。)
「優秀なヤツだと思っていたんだがな…」
ポツリと零された笠間の言葉。
”思っていた”という過去形で口にされたそれに少し違和感を抱く降谷だったが、
「“ゼロの降谷零”は、
こんなところで他人の昔話を掘り返すほど暇じゃないはずだろう?」
軽い嫌味とともにポンと肩を叩かれ、屋上を去っていく笠間に、
とっさに姿勢を正し、ピシッと頭を下げた。
笠間の厳しい目の裏に、
当時を思い出していたのか、
懐かしむようなそんな色が浮かんでいた気がした。
残った紫煙の匂いが鼻をくすぐり、
供えられた花をちらりと見つめた降谷のポケットから、
鳴り響いたスマホの着信音。
笠間の言うように悠長にここに長居は出来ないのは事実だ。
降谷は電話の相手に短い返事をすると,
すぐさま足早にオフィスに戻っていったのだった。
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white12(プロフ) - リンさん» すごく嬉しいコメントありがとうございます!励みになります。劇的なストーリー展開ではないので物足りなく感じるかもしれませんが、そのように感じて頂けたのは本当に嬉しいです。話はもう少し続きますがお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月23日 21時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
リン - こう、じわじわと距離が深まっていくお話は中々夢小説にないので、個人的にとても嬉しいです。内容も面白くって読んでいて飽きない……すごい。更新楽しみにしてます! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 73f2c7a15b (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - アイスあるさん» 嬉しいコメントありがとうございます!全体的にほんわかするストーリーを目指したつもりなのでそう言って頂けたら嬉しいです!これからもお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月16日 18時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - あやなさん» 本作をお読み頂きありがとうございます。他の作品も読んで下さったとのこと、すごく嬉しいです!更新頻度はややマチマチですが、今後もお楽しみ頂けたらと思います! (2020年5月16日 18時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - 心が温かくなります!更新頑張ってください! (2020年5月16日 16時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2020年5月15日 23時