気がかりな昼下がり_3 ページ17
『最近、ちょっと注意力散漫みたいで。
もう少し…気をつけないとダメですね。』
「どこも怪我はしてませんか？」
『はい。大丈夫です。
ありがとうございました』
そう言って、もう一度安室に頭を下げたAは、ゆっくり歩き出した。
「あ、ちょっと――」
『今日、お店は定休日で。
これからポアロに行こうと思っていたんです。
もしかして、安室さんもこれから？』
不安そうな色は完全に払拭されていないが、
もう、Aの顔にはいつもの笑みが浮かべられている。
何か言いたそうな安室だが、
困ったように微笑むと、
彼女と並ぶようにそのままポアロの方向へと歩き始めた。
もちろん、さりげなくAを壁沿いに歩かせるようにして。
そして、
『…あ。』
思い出したように手にした紙袋の中身を覗き込み、
そこに入った桜餅が無事なことを確認すると
『これ、…お店でお渡ししようと思っていたんですけど』
「え？」
そう言って、紙袋を安室に差し出すA。
『桜餅、です…』
「桜餅？」
『この時期、毎年作ってるんです。
お店のものには全然敵わないんですけど、…もし良かったら』
「手作りですか？凄いですね…！」
安室が紙袋の中をちらりと覗き込むと、
そこには、透明のパックに入った桃色と緑のコントラストが綺麗な桜餅が3つ。
「綺麗な桜餅ですね」
『お嫌いじゃないと良いんですけど。』
「とんでもない。和菓子は好きなので、嬉しいです」
ニコリと微笑んだ安室に、Aは瞬きを繰り返した。
ずいぶんと身長の高い彼。
見上げるようにして、Aの眼に映った安室の顔。
上手く微笑み返せなかったのは、
彼の肩から覗く逆光が眩しかったからだと、
先ほどバイクにぶつかりそうになってしまった戸惑いが残っているせいだと、
Aは心の中で呟いた。
『えっと、色々と――、あ、さっきも助けていただいたので、
…ほんの少しお礼、です』
「ありがとうございます。
仕事終わりにいただきますね。楽しみです」
そうしてそのまま並んでポアロへ向かう2人。
(…さっきのバイク。
路地を曲がる直前にスピードを急に上げた…？
故意に狙ったという訳じゃ…ない、と良いんだが…)
確証はない。
ただ、どこか気に掛かる接触未遂事故に、
安室はちらりと心配そうにAを見つめていたのだった。
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white12(プロフ) - リンさん» すごく嬉しいコメントありがとうございます！励みになります。劇的なストーリー展開ではないので物足りなく感じるかもしれませんが、そのように感じて頂けたのは本当に嬉しいです。話はもう少し続きますがお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月23日 21時) (
レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
リン - こう、じわじわと距離が深まっていくお話は中々夢小説にないので、個人的にとても嬉しいです。内容も面白くって読んでいて飽きない……すごい。更新楽しみにしてます！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 73f2c7a15b (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - アイスあるさん» 嬉しいコメントありがとうございます！全体的にほんわかするストーリーを目指したつもりなのでそう言って頂けたら嬉しいです！これからもお付き合い頂けたら幸いです。 (2020年5月16日 18時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - あやなさん» 本作をお読み頂きありがとうございます。他の作品も読んで下さったとのこと、すごく嬉しいです！更新頻度はややマチマチですが、今後もお楽しみ頂けたらと思います！ (2020年5月16日 18時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - 心が温かくなります！更新頑張ってください！ (2020年5月16日 16時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年5月15日 23時
