4869 (4)【名探偵コナン】

黒の言葉と本当の名前_9 ページ13

『実用可能になるのは、多分半年以上は先になりますが、…もし、それで良ければ、使うことは出来るかと…。
あ…、でもかなり高額になると思うんですけど』

「そうじゃなくて――」

『でも、…あのプログラムのデータ以外、
…私に近づいて、得られるものは…、無いと、思いますけど。
他に何か、あるんですか?』

「…」

『叔父もあと2ヶ月は...出て来られませんし...。
研究所にあるデータの多くは、家宅捜索で警察に押さえられています。
私がお渡しできるのは、他にはありません...。
あのプログラムのデータが欲しいなら、言って頂ければ…、取引は出来ると思います。
私の独断で、無条件にお渡しするのは...、難しいですし、
…出来れば、実用可能になった後で買って頂いた方が嬉しいですけど』


的外れのような、
しかし、時田の言うように彼が自身を危険な目に合わせるような人間なのであれば、
データが目当てなのだろうと、
それ以外に心当たりがないと言わんばかりのAのセリフ。


試すように問うた景光は、
自嘲めいたため息を零した。


「俺のこと…、信用しすぎだと、思うぞ。」

『でも…データが欲しいっていうだけなら、…分かりませんけど、
危険な目に遭わせるとか…、私、時田さんがそんな人には、…見えないので』

「…え？」


『もしそうなら、…あの男の人に拉致された後、
わざわざ謝りに来る必要、…ありませんし。』

「…」


『私を監視していたなんて、…わざわざ言わないと思いますし。
信用させるためだとしても、…それは、時田さんに…、
あまりメリットが無いように思いますし。』


「…」


『それに…、
あんな風に、”ごめんな”って、…優しい顔で言わないと、思います』


信用したいと言う意味なのか。
しかし、景光の行動を分析したゆえのAの言葉。


景光はフッと柔らかく笑みをこぼし、彼女から視線を外すと、
軽く握りしめた右手をぼんやりと見つめた。

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