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黒の言葉と本当の名前_8 ページ12

『…お疲れ様、です』

「こんな夜に、ごめんな」

『いえ。...どうぞ』



まだ夜は少し冷える時期だ。
戸惑いつつも、さすがに玄関先で話すのは躊躇われ、
景光を玄関に招き入れるA。

当の彼は申し訳なさそうに小さな笑みを浮かべていて、
その見慣れた表情に、
Aは困り顔で笑みを返した。


何故彼がこの部屋を知っているのか、と考えるも、
あの夜この部屋に彼を運んだのは自分で、
それは当然だと納得するA。


しかし何故彼が訪ねてきたのかは、到底予想がつかない。
ただ、その見慣れた柔らかい表情に、
先ほど見た夢により、恐怖や不安が入り混じったじわりと重たい感情が、
解されていく気がした。




『あの、…何か?』

「…ちょっと」

『…あ…、もしかして、私、勝手に色々メールを送ってしまって…。
ご迷惑、でしたか..?』

「…そうじゃなくて」

『…』

「顔が見たくなったっていうか…」


時々顔が見たいと言ったのは自分の方だ。
研究所に会いに来てくれたことからも、
その自分の要望を、ただ受け入れてくれたのだろうと考えていた。

しかし、家に来てくれるとまで考えていなかったAは、
戸惑った様子で、わずかに頬を紅潮させていた。


「でも、…あまり警戒心がないのは考えものだと思うぞ」

『え…?』

「…俺のこと、知らなくて良いって…、言ってたけど。
もし俺が、…君を拉致した奴らの仲間だったら…、どうするんだ」


真剣な目で見つめてくる景光に、
Aは困った様子でわずかに視線を逸らした。


「君を危険な目に遭わせるような、…人間だったら、どうするんだ。
…こんな風に簡単に信用して、部屋に入れるのは、…無防備だと思うぞ」

『それは…』


玄関という狭いスペースでは、
必然的に互いの距離は近いわけで。

突然訪ねてきて、何故怒られているのかが上手く理解出来ないAだったが、
30 cmほどある頭上から落とされる景光の言葉に、何かを考えるようにして口を開いた。


『…あの男の人たちの仲間かもしれないって…、
時田さんは、データを狙ってるってことですか?』

「え?」

『…今はまだ試用段階で、…改良は必要ですけど、
…もし、そうなら、…データはお渡し出来るかもしれませんけど…』

「…は?」

『4869と、シェリーの…こと、ですよね?
ただ、セキュリティ面は改良したので、…データだけお渡ししても使えないと思いますけど…』


Aの言葉に、景光は瞬きを繰り返している。

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設定タグ:名探偵コナン , 諸伏景光 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 桃桜月さん» 本作をお読み頂きありがとうございました。とても嬉しいコメントを頂き、大変感激しております。お読み頂けた時間が少しでもほっこりとしたものになっていたのなら、嬉しい限りです。最後まで読んでくださりこちらこそありがとうございました! (2020年9月7日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
桃桜月 - 完結、おめでとうございます。読んでいて、心がホッコリ和みました。素敵なおはなしでした。読んでいて、お話の中にのめり込んでしまいました。ページをめくる手が止まりませんでした!心が暖まるおはなし、ありがとうございました!! (2020年9月5日 22時) (レス) id: df6d2ee374 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 柊.さん» コメントありがとうございます。なんと、最初のシリーズから一気読みして下さったんですね!嬉しい限りです。他2作品とは異なり、本作は割と独立していた作品でしたが、シリーズとして読んで頂けて本当に嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました☆ (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» いつも暖かいコメントありがとうございます。本作も最後までお付き合い下さりありがとうございました。作者の妄想ストーリーをそのように言って頂けて本当に嬉しく思います。次作執筆は未定ですが、その際は宜しければまたお読み頂けたら嬉しいです。 (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
柊.(プロフ) - 一番初めのシリーズから一気読みしました!とても話の中に溶け込んじゃいました。完結おめでとうございます^_^ (2020年3月17日 10時) (レス) id: c4e754f3c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年3月7日 23時

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