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黒の言葉と本当の名前_7 ページ11

その夜。




自宅のローテーブルでノートPCの横で身体を伏せ、軽く目を閉じていたAは、

急にパチリと目を開けると、
乱れた呼吸を繰り返した。


『...ずいぶん久しぶりに見た気が...する...』


呼吸を整えながら軽く額に手を当て不安げに瞳を揺らした後、
細いため息を吐き出すA。


うたた寝程度ではあったものの、
よりによって最も見たくない光景が夢に出てくるとは、――と。


19年前のあの日の光景だ。
長い年月が経ち様々なことが薄れてきているとはいえ、
今だに時折夢でフラッシュバックするのは、


大破した車内と、
頭や体が血に染まり、目を閉じている両親の姿。


後部座席で意識を失う前に見た、
その光景だ。





そして、
目の前のノートPCのディスプレイに視線を向ければ、
そこには開かれた作業中のファイルたち。


『...いつの間にか、寝てたのね...』


背にあるチェストの上から写真立てを手に取るA。
そこには、両親と映った写真。幼い頃に両親と行った東都タワーで撮ったものだ。

もうほとんど覚えてはいないが、
夢のせいでネガティブな感情に包まれそうになっていることを感じたAは、
キッチンへ向かいケトルでお湯を沸かし始めた。



『…はぁ』



目をこすりながら、
ケトルから吹き出し始める湯気をぼんやり眺めるA。


『叔父さまのことがあったから...かな...』



しばらく見ることの無かったその夢の原因を追求するように思考を巡らせ始めたが、
軽く左右に首を振ってそれを中断させると、
ケトルを手にコーヒーを淹れ始めた。




そして、
コポコポという音と、コーヒーの香りで閉じかけていた目が冴え始め、
ポットに落ちていくコーヒーの雫を静かに眺めていると、



部屋に響いたインターフォンの音。




驚いたようにケトルをコンロに戻したAは、
モニターへと視線を移した。


『え…』


先ほどまで寝ぼけていたことを自覚しているためか、
念の為、壁の時計に目をやれば、既に22時を過ぎている。


Aは困った顔を浮かべつつ、
玄関の方へと向かった。


ガチャリ


静かな金属音とともに開いたドアの先にいたのは、


――時田だった。

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設定タグ:名探偵コナン , 諸伏景光 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 桃桜月さん» 本作をお読み頂きありがとうございました。とても嬉しいコメントを頂き、大変感激しております。お読み頂けた時間が少しでもほっこりとしたものになっていたのなら、嬉しい限りです。最後まで読んでくださりこちらこそありがとうございました! (2020年9月7日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
桃桜月 - 完結、おめでとうございます。読んでいて、心がホッコリ和みました。素敵なおはなしでした。読んでいて、お話の中にのめり込んでしまいました。ページをめくる手が止まりませんでした!心が暖まるおはなし、ありがとうございました!! (2020年9月5日 22時) (レス) id: df6d2ee374 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 柊.さん» コメントありがとうございます。なんと、最初のシリーズから一気読みして下さったんですね!嬉しい限りです。他2作品とは異なり、本作は割と独立していた作品でしたが、シリーズとして読んで頂けて本当に嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました☆ (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» いつも暖かいコメントありがとうございます。本作も最後までお付き合い下さりありがとうございました。作者の妄想ストーリーをそのように言って頂けて本当に嬉しく思います。次作執筆は未定ですが、その際は宜しければまたお読み頂けたら嬉しいです。 (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
柊.(プロフ) - 一番初めのシリーズから一気読みしました!とても話の中に溶け込んじゃいました。完結おめでとうございます^_^ (2020年3月17日 10時) (レス) id: c4e754f3c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年3月7日 23時

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