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それはまるで ページ1

景光が静かに振り向くと、


そこには、
軽く唇を噛んで、怒ったように自身を見つめているAの姿。



『時田さんは…、ずるいです』

「…」

『だったら、どうしてこの間、会いに…来たんですか。
…偶然、じゃありませんでしたよね』


ジトリと睨みつけるように景光を見据えるA。



『なんで…、謝りに来たりしたんですか』

「…」

『今だって、どうして声をかけたりしたんですか。
気づかないフリして…、立ち去れば良かったじゃないですか。
最後なんて言うなら、何で――』


俯くAは、
キュッと唇を噛み、小さく肩を震わせていた。


瞳が揺れているように見えるのは、街灯のせいだ。
景光はそう思った。


ただ、何かを耐えているように、
纏まらない思考で混乱しているように、
悔しそうな表情が目に入るだけ…だ、と。


『…どうして、あの時、…抱きしめたり…したんですか』


俯いたまま、絞り出すように声を漏らしたA。


『…あんなことがあって、私に同情…してるだけだって、
ただ、…慰めようとしてくれただけなのかもしれないって、
…分かってます。
でも…、やっぱり、時田さんは、ずるい…です』


視線を合わせず言葉を漏らすAのじわりと揺らぎ始めた瞳に、
景光はもう気づかないフリは出来なかった。
その声が、震え始めていたからだ。



しかし――、

Aは、感情を落ち着かせるように静かに息を吐き出すと、


『ごめんなさい…』

と呟いた。


『困らせたくないなんて言ったのに、…私、…矛盾してますよね。
…変なこと言ってしまって、ごめんなさい。
気にしないで…ください』


瞳を揺らがせたままで、ふわりと笑みを浮かべたA。
しかし、上手く笑えていない彼女の表情に、
心を握りつぶされるような感覚を覚えた景光。



そのまま、くるりと景光に背を向け、
ベンチに置いたギターを手に、ケースに片付け始めたAだったが、
手首に感じたわずかな温もりに、
ゆっくり後ろを振り向いた。



手首に感じた熱の主は、
苦しそうな表情で、自身を見つめている景光だ。


引き止めるようにして掴まれた手をどうすれば良いのか、
落ち着かせたばかりの感情が再び乱れそうになりAが俯いた直後――、


引っ張られる感覚と同時に、
その身体はふわりとした温もりに包まれた。

それはまるで_2→



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設定タグ:名探偵コナン , 諸伏景光 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 桃桜月さん» 本作をお読み頂きありがとうございました。とても嬉しいコメントを頂き、大変感激しております。お読み頂けた時間が少しでもほっこりとしたものになっていたのなら、嬉しい限りです。最後まで読んでくださりこちらこそありがとうございました! (2020年9月7日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
桃桜月 - 完結、おめでとうございます。読んでいて、心がホッコリ和みました。素敵なおはなしでした。読んでいて、お話の中にのめり込んでしまいました。ページをめくる手が止まりませんでした!心が暖まるおはなし、ありがとうございました!! (2020年9月5日 22時) (レス) id: df6d2ee374 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 柊.さん» コメントありがとうございます。なんと、最初のシリーズから一気読みして下さったんですね!嬉しい限りです。他2作品とは異なり、本作は割と独立していた作品でしたが、シリーズとして読んで頂けて本当に嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました☆ (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» いつも暖かいコメントありがとうございます。本作も最後までお付き合い下さりありがとうございました。作者の妄想ストーリーをそのように言って頂けて本当に嬉しく思います。次作執筆は未定ですが、その際は宜しければまたお読み頂けたら嬉しいです。 (2020年3月18日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
柊.(プロフ) - 一番初めのシリーズから一気読みしました!とても話の中に溶け込んじゃいました。完結おめでとうございます^_^ (2020年3月17日 10時) (レス) id: c4e754f3c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年3月7日 23時

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