SNOW DROP II (9)【名探偵コナン/警察学校組】

真夜中の本音_2 ページ34

『正しいかどうかは、分からない。
…確かに、貴方たちには不本意なこともある。でも、助かったことも多いわ。
あの時、約束を…守って貰ったことで、こちらも助かったの。
…黒に染まりかけているとか何とか良く分からないけど、
貴方の信念が曲がるようなことがなければ、それで良いんじゃな――』


言い終わる前に、前のめりになる形で体勢が崩れ、
Aは突如与えられた温度に、戸惑いの表情を見せた。

強引じゃない。
しかし、ふわりと、
玄関で立ったまま言葉を交わしていた彼に、抱きしめられたからだ。


『ちょ、ちょっと…』

「やっぱり…、変わらないな。Aは。」


呟くように優しいトーンで零された降谷の言葉。
ほんの少し耳にかかった吐息で、Aはわずかに肩を震わせた。


『綺麗事だって、…言いたいんでしょ』

「そうじゃ、ない」

『…そんな綺麗な組織じゃないって、私だって、一応…ちゃんと、分かってるわよ。
それに、納得いかないことがあれば黙って従うつもりなんてない。
…貴方たちのことだって、許せないことも…これからもきっとあるわ。
でも、やっぱり、…それぞれがそれぞれのやり方でやるべきことをやるだけだって、
その考えは変わらないわ。』


身体を離そうとしながらも、
さほど力が入っているわけでもないAの腕。
それゆえ、彼女の体は未だ降谷の温度にふわりと包まれたままだ。

不本意そうに呟くAに、
降谷が少し苦しげに、しかし、柔らかく口元を緩めた。


「…公安にも乗り込んできたくらいだからな」

『それは…』

「結構有名になってるぞ。ウチじゃ。」

『…』


Aの無鉄砲な行動を責めるようなセリフ。
しかし、責められているなどと全く感じさせないその声のトーンに、
その柔らかさに、Aは口を閉ざしている。


「…ありがとう」


そして、吐息混じりに呟かれた言葉。
再び耳に、首筋にわずかにかかったその吐息に、Aの頬が少しずつ紅潮し始めた。

戸惑ったのか、今度は身を捩るようにして降谷の腕から離れようとするが、
本気で抵抗しているわけでもないAの体は、やはり彼の腕に柔らかく包み込まれたままだった。

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