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返し忘れていたもの_5 ページ29

「怪我は、もう大丈夫なのか?」

『…かすり傷だって言ったでしょ。とっくに治ってるわ。
心配させるな、って言いたいの?』

「…”また言われる”って、不満そうだったからな。
度々怪我をする君にも責任はあると思うんだが」

『やっぱりあの夜、尾けてられてたみたいね。貴方に』

「…たまたま、ですよ」


安室の口調で返事を返され、
やはりそれ以上聞くつもりもないAは、ふっと表情を変えた。


『ネクタイを取りに来たのと、これを返すためにこんな時間に訪ねてきたの?』

「…」

『他にも何か…、用があった?』


少しだけ、Aの脳裏に思い返されたのは、やはり3年前の夜のことだった。

全く同じこの玄関で、
何も言わない降谷に、
苦しげな、心が切れてしまいそうな表情の彼に、
ただ強く抱きしめられたあの夜のこと。


ふ…っと、身体を嫌な予感がよぎりそうになり、Aはゆっくり瞬きをした。


『話があるなら中に――』

「A」

『…え?』


言葉を遮るようにして呼ばれた自身の名前。
“彼”の口から呼ばれていいものか、まだ判断がつかないそれ。
目を細め、どこか困ったような表情のAに、
降谷がゆっくり口を開いた。


「結論は、出たのか?」

『…は?』

「確かめたいと、言っていたこと…ですよ。
先日、突然ポアロに来て、僕にお願いをした、でしょう?
確かめたいことがある、と。」

『………は?』



何の話だ。
急に安室の口調で、問いかけられ戸惑うA。

しかしあの日のことを忘れたわけじゃない。
少しずつ視線を彷徨わせ、一旦口を噤んだAは、


『…貴方には、関係ないわよ』


と、呟いた。

そして――、


「僕は、…一緒にいたいと思ってる。傍にいたい、と。」

『…………え…?』


頭上から降ってきたあまりにも唐突な言葉に、
Aの思考が追いつくはずもなく、
見上げた彼の顔があまりにも真剣で、Aは、その1文字を発するのが精一杯だった。

黒に染まりかけたグレー→←返し忘れていたもの_4



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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 番外編は、続編みたくなりそうな予感ですが、引き続きお楽しみ頂けたら嬉しく思います! (2020年2月19日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» いつも私の作品を読んでくださりありがとうございます!なーこさんからの嬉しいコメントにいつも励まされております。長々と引っ張ってしまった感はありますが、葛藤もあり、それになかなか素直になれない2人のもどかしい感じを分かって頂けて嬉しいです。 (2020年2月19日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*徐々に入り組んでいく二人の関係の糸が解けるのか、切れてしまうのか、お互い1歩進んで戻っての繰り返しがもどかしくて良いですね...笑。あと部下の一ノ瀬くん...可愛い...。5ヶ月に渡る長期連載お疲れ様です!番外編も楽しみにしてます*。 (2020年2月18日 23時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ますさん» そう言って頂けて本当に嬉しいです!ここまでお読み頂きありがとうございました。宜しければ、引き続き更新予定のエピローグもお楽しみくださいませ。 (2020年2月18日 0時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
ます - 更新楽しみに毎日過ごしてました。笑素敵な作品をありがとうございました! (2020年2月17日 2時) (レス) id: 5f95b1313e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年2月7日 19時

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