SNOW DROP II (9)【名探偵コナン/警察学校組】

真夏の夜の_5 ページ24

一方その頃。


「…もう3日目だよな」
「今日は、…大丈夫みたいだけど…」


ソワソワと上司の様子を伺うように、
その機嫌を伺うようにして、書類を手にチラチラと彼のデスクへ視線を向けるのは、公安刑事たちだ。

デスクでひっきりなしに作業を進めるのは、彼らの上司である降谷。
目元にはクマが携えられており、ここ3日ほど、夜通しオフィスにいることを部下である彼らは知っていた。


心配そうに眺める刑事たちの中には、もちろん風見の姿もある。


「降谷さん、こちらの調査書と、…先日の案件の報告書、確認お願いします」

「…あぁ。」


書類を手渡した風見がチラリと視線を落としたのは、彼のネクタイだ。
きっちりと、その首に絞められている臙脂色のネクタイに目を留め、
気づかれない程度に表情を緩める風見。


「…何だ」

「い、いえ。失礼します！」


降谷のデスクを離れた風見は、2日前の夜のことを思い出していた。
潜入捜査をしている降谷が、公安警察あるいは公安部に姿を現さないことも珍しくない。
といっても、彼が確認すべき案件は山積みで、そうこう言っていられず、
何だかんだと毎日朝早くあるいは夜遅くに登庁してくるのだ。

そして、2日前の夜に登庁してきた彼は、
…ネクタイをしていなかった。

疲れていようが何だろうが、きっちりとスーツを着こなし、
いかにも仕事のできる男という人物である彼。
もちろん、見た目だけではないのだが。

そして、服装の乱れは心の乱れだ。
などという降谷の言葉を度々聞いていた部下の刑事たち。



ネクタイをしていないことに、

“ちょっと、な”

とだけ言っていた降谷だが、
周囲の刑事たちは、


“降谷さん…、絶対働き過ぎだ…”


と、疲れが原因なのだと誰もが納得していた。


「…こちらの様子を気にする暇があったら、さっさと手元の案件を進めろ。
さっき話した内容と渡した書類はもうとっくに頭に入ってるんだろうな？」


「「「…は、はい！！」」」


チラチラ、と、その体調を心配して視線を向けていた刑事たちは、
寝不足の苛立った声を発する降谷に一喝され、慌てて作業を進めていったのだった。

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