SNOW DROP II (9)【名探偵コナン/警察学校組】

真夏の夜の_2 ページ21

『由川の証言よ。
こちらが睨んだとおり、櫻木の横領は東堂への不正な融資のためだったみたいね。
元々は、櫻木が私服を肥やすために横領していたみたいだけど、
6年ほど前に取引先の東堂にバレてしまってから、
それを口止めする目的で高額な融資を続けることにした。
そういうことよね。』

「そう、みたいですね」

『正式に録音されたものじゃないだろうから、あれを証拠に使うのは難しいけど、
もう一度、証言をお願いできないか頼んでみるわ』

「…俺が行きますよ」

『ううん。あのボイスレコーダーだけで、十分よ。…助かったわ』

「でも――」

『…多分、刑事として接触したわけじゃないんでしょ？』

「…え？」



捜査に関しては色々と鋭いA。
ほんの少し“イロ”を使って聞き出したことまでは気づいていないだろうが。


『良く分からないけど、彼女も色々大変だったみたいだし。
…不倫なんて、許されることじゃないから同情の余地はないけど、
事件の後、役員や社員一部の人間にバレて間接的に退社を迫られてたみたいだし』

「まぁ、結局…、ほとぼりが冷めた頃というか、戻ってきてましたけどね」

『彼女自身は、横領には絡んでなかったみたいだし。
…知っていて止めなかったのは、問題だけど。
やっぱり、ちゃんと刑事として話を聞いて彼女の意思で話して欲しいから』

「…」


由川を責めているようで、ほんの少し気遣っているようなセリフ。
そして、あの録音について礼を言いながら、
やはり、真正面からまたお願いしに行こうとしているAに、
一ノ瀬は複雑そうに小さく息を吐き、ピタリと足を止めた。


『…ん？どうかした？』

「いえ。…とりあえず、良かったです」

『何言ってるのよ。由川のこともそうだけど、
RYUJIって男とあのマネージャー、その余罪も含めて調べることはまだまだ残ってるのよ』

「そうじゃなくて」


自身の腹部の方をじっと見つめられ、
Aもつられるように同じ場所に視線を向けた。


「あの時刺された場所と同じだったので、…心配しました」

『かすり傷よ。もうとっくに治ってるわ』

「春宮さん、怪我しすぎですよ」

『もう少し訓練しろ、って言いたいの？
悪いけど、貴方に言われたくないんだけど』


ジロリ、と一ノ瀬を見据えたA。

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