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拉致まがいの_2 ページ8

『…』




RX-7。
車には興味がないが、
何度も目にした経費リストに記載された内容から、
そんな車種だったことをぼんやりと思い出したA。

もはやそれも今更だ。

車種が何だろうが、
それがスポーツカーだろうが、
朝日を反射してボディの白い塗装がやけに綺麗に光っていようが、
Aにとってはどうでも良いこと。


「おはようございます」


彼女の表情をぐにゃりと歪めさせたのは、
他ならない運転席からスマートに降りてきた人物だ。



「これから出勤ですか?」

『…急いでいるので、何か話があるなら――』

「電車、止まっているみたいですよ」

『え…?』



片方の口元を軽く上げたように見えたのは気のせいか。
訝しげな顔で問いかけたA。
えらく丁寧な口調でわざわざそれを知らせに来てくれたらしいその男は、
読めない表情で軽く首を傾げていた。


「どうやら、近くの踏切内で事故があったようですね」

『…』

「ここから駅まで走って10分弱ってところ…か。
電車が再開する時刻は未定、
…おそらくタクシーもずいぶん並ぶことになるだろうな」


近くの踏切での事故。
警察庁までの経路は2経路あるわけだが、
それが本当だとすれば、そもそも最寄駅から電車が走っていないということ。


さっとスマホを取り出し、
電車の運行状況を調べたAは、
目の前の男が言っていることが本当だと理解し、
あからさまに苦々しい顔をした。


それは、急に口調を変えた彼に対して、
その読めない意図に対しての苛立ちからでもあった。


事務官室で、
警察庁の前で、
そして、あろうことか自宅にまで、
こうして待ち伏せるように度々現れる降谷零に対しての。


「もし良かったら」


くいっと軽く顔を動かして、
自身の車を指し示すような仕草をした降谷。


『…』


結構です、と言いたいところではあるが、
現実的に今の状況は、
電車が使えないとすると勤務開始時間には間に合わない可能性も高く、
背に腹は変えられないという気持ちは大きくて。

それに、
先日屋上に連れ出されたことといい、
今この状況といい、
どうにも解せない降谷の行動の意図を知りたい気持ちも、
大きくて。


"ストーカーで訴えますよ"
と言ってやりたいところをぐっと堪えて、


『…よろしく、お願いします』

と、呟くように口にしたA。


そうして、
しぶしぶRX-7の助手席のドアに近づいた彼女に、
降谷は今度は分かりやすく口角を上げた。

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white12(プロフ) - ra -ra さん» 嬉しいコメントありがとうございます。更新頻度がまちまちで,また,お目汚しの多い作品となりお恥ずかしいですが,今後もお楽しみ頂けると嬉しいです。 (2021年2月22日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - 初めまして!この小説凄く良いです! (2021年2月21日 13時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年2月19日 20時

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