検索窓
今日:15 hit、昨日:64 hit、合計:122,189 hit

都合が良い話_4 ページ43

「この間は、
“何も知らない”って言って、適当にはぐらかしてくれたけど、
私の質問にも答えてくれる気になったってこと?
こっちに色々聞いてくるだけなんて、ずいぶん都合の良い話よね?」

『…残念だけど、あの小野田の事件のことは、
私だって何も分からないって言ったはずよ』

「…」

『嘘はついていないわ。
一応、これでも同期なのよ。
それに、刑事課の人間でもあった身として、
“佐藤刑事”を騙すような真似、するつもりはないわよ』


佐藤を見据えるAの胸が、
ほんの少し、痛んだ。

言っている事は本当だ。
小野田の事件のことは、
佐藤が知りたがっている“一課から捜査権を奪った公安の捜査状況”については、何も知らない。
事件の詳細だって、
目の前で見たこと――つまり、佐藤たちに事情聴取で話した内容くらいしか知らないのだ。

公安の潜入捜査に関わったという情報も、
今となっては大した情報にはならない。
なぜなら、その目的もA自身知らないのだから。




言葉を途切らせた佐藤の身体が、
諦めたようにすっとAから離れた。

彼女と似たような、複雑そうな表情で視線を絡めたAは、


『…捜査中に時間とって悪かったわ。――ありがとう』

と言って、休憩室を去って行った。



「ありがとう…って、どういう意味よ」


つい先日も、彼女が去った後で似たような言葉をこぼしていた佐藤。
しかし、そんなことを覚えているはずもなく、
ただやはり、
違和感に似た少し心配な気持ちと苛立ちの交えた感情が胸の辺りを渦巻くだけで。


「あ、佐藤さんこんなところにいた!」


そこに響いたのは、高木の声。


「って、あれ?さっきのって、水瀬さん…ですよね?」

「あぁ、ちょっと...仕事だったみたいだけど、
…で、どうかしたの?」

「あ、そうそう。今朝の事件、目撃者が――」


佐藤を探しにきたようで休憩室に現れた高木の姿は、
彼女を、”水瀬A”の同期ではなく、
”捜査一課の刑事”に瞬時に引き戻したようで。

佐藤は険しい顔つきに戻ると、
彼とともに、一課のオフィスへと走って行ったのだった。

移行のお知らせ→←都合が良い話_3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (99 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
147人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

white12(プロフ) - ra -ra さん» 嬉しいコメントありがとうございます。更新頻度がまちまちで,また,お目汚しの多い作品となりお恥ずかしいですが,今後もお楽しみ頂けると嬉しいです。 (2021年2月22日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - 初めまして!この小説凄く良いです! (2021年2月21日 13時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:white12 | 作成日時:2021年2月19日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。