上書きされた違和感_3 ページ5
降谷が口にしたあの不穏な言葉から、
2年前の事件をもう一度探るだろうことは容易に想像がついた。
それにはまず、
捜査資料を確認するだけでなく、
あの事件に直接的に関わっていた人物に接触し、
当時の状況を聞くのが正しいやり方と言える。
必ずしも隠蔽という訳じゃない。
しかし公安となれば、
捜査方法、協力者の情報、その他諸々に至って、
捜査資料に書かれていない微妙なグレーゾーンの情報が散在していることは、
内部の誰しも理解していることだからだ。
降谷には、
いくらでも協力するつもりはあると表向き素直な言葉をこぼし、
加えて、監視して動向を探ればいいと挑発的な言葉を投げつけた。
しかしながら、
やはり関わることは出来ない現状から、
公安警察とその上層部からの指示のみで動く、
公安という組織の閉鎖的で独立したあり方を思い知ることになったA。
その一方で、少しの違和感も抱いていた。
『…なら何でわざわざあんなこと言いにきたのよ』
不満げな顔でポツリと呟いてビルの裏手に回ろうとしたAは、
『…――』
暗い路地の中、目の前のビルの影から出てきた人物に思わず息を呑んだ。
「...」
それは、上下ともに黒い服に身を包み、
同じく黒い帽子を被った長身の人物だった。
たった今、頭に思い浮かべた顔が目の前に現れ、
…いや、そうだと感じるのに、そうではない違和感を覚えて、
Aはもう一度コクリと息を呑んだ。
それは、先ほど思い返していた違和感を上書きするには十分なもので。
目の前に現れた人物はAを見て一瞬だけ目を見開き、
キュッと眉をひそめ険しい顔をした。
それは、
黒づくめの格好をした、降谷だった。
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white12(プロフ) - ra -ra さん» 嬉しいコメントありがとうございます。更新頻度がまちまちで,また,お目汚しの多い作品となりお恥ずかしいですが,今後もお楽しみ頂けると嬉しいです。 (2021年2月22日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - 初めまして!この小説凄く良いです! (2021年2月21日 13時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2021年2月19日 20時