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上書きされた違和感_2 ページ4

警察庁を出ていつもの電車に乗った Aが降りた先は、
いつもの自宅の最寄駅――、ではなく杯戸駅だった。


冬の匂いを交えた冷たい風に身を強張らせながら、
とある方向へ歩いていくA。


『…』


沈んだ陽がまだ少し色を残している程度の空の下、
いくつかの外灯に照らされた場所には、
一部立ち入り禁止のイエローテープが貼られていた。

捜査はまだ続いているはずで、
それも当然だと、辺りをゆっくりと伺うように歩いていくA。



頭上を見上げると、
瀬戸法律事務所と掲げられた少し小洒落た看板があった。


ここは先日、
爆弾魔による立てこもり事件があった法律事務所が入ったビルだ。


『駅から10分、ってところか…』


どのルートで犯人がここに現れたかは分からないが、
周囲に備え付けられていた防犯カメラの数を頭に入れつつここまで歩いてきたA。


“この国のために。
――そう口にしたそうだ”


降谷が”わざわざ“伝えにきた情報を反芻し、
さりげなく周囲に視線を向けながら、Aはビルを睨みつけるように見据えていた。

駅から少し歩いた場所にあるビルの周囲は、
もちろん外灯はあるものの、
住宅街からは少し離れていて人通りは少ないようだ。


(…小島と、何らかの繋がりがある、
もしくは、…2人と独立して関わっていた人物が、いる。
2年前の事件と繋がっている可能性はもちろん、
もしかすると、2年前にあいつらが起こした事件よりももっと質 (タチ)の悪い…組織的な何かが関わっている可能性も十分にあるってことよね)



何も話すことはない。
何度もそう言われてきたはずなのに、
思いがけず一方的に与えられた情報。
それでいて踏み込むことはやはり許されない状況は変わらない様子で。

先日の彼との会話は、
別の意味で踏み込もうとしていた自分自身の感情に皮肉にも気づくきっかけにもなった訳だが、
降谷の考え、心情などやはり知る由もなくて。


もちろん、彼らの捜査に支障をきたすようなことをしたいわけじゃない。
かといって、やはり、じっとしていられるはずもない。



『…』



ちらりとスマホを取り出し、
先日のように、ケースに付けられた鏡を利用して背後をさりげなく確認するA。
警察庁を出てから何度か確認したものの、
先日同様、公安刑事や誰かに監視されている気配は感じられず、
挑発的にこぼした先日の言葉は意味を為さなかったようだと、
Aは消え入りそうなため息をついた。

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white12(プロフ) - ra -ra さん» 嬉しいコメントありがとうございます。更新頻度がまちまちで,また,お目汚しの多い作品となりお恥ずかしいですが,今後もお楽しみ頂けると嬉しいです。 (2021年2月22日 20時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - 初めまして!この小説凄く良いです! (2021年2月21日 13時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年2月19日 20時

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