雷鳴轟く朝の_3 ページ42
「…須藤。すまないが、先ほど話していた件、
5年前の資料も確認しておいてくれないか」
「――…え?あ、はい!」
Aの身体越しに、
デスクにいた”須藤“というらしい人物に指示を出した降谷。
須藤は、歯切れの良い返事とともに席を立ち上がると資料室へと向かった。
『人払いをする必要は無かったのですが』
「…何のことだ」
『…いえ』
なら何故こんな時間に来たのだと言われているようで、
いや、それは自分自身が良く分かっていて、口を閉ざしたA。
外では雨が酷くなってきた様子で、
ガラス越しにザーザーと窓を打ち付けるような音が断続的に聞こえていた。
公安警察のオフィスに残った2人は、
睨み合っているようにも見えて。
Aは、降谷を見つめて静かに口を開いた。
『監視は続けているのでしょうか。…神星教団に対して』
「…」
通り魔事件の犯人が呟いた言葉は、
降谷は把握していない。
犯人が何かを叫んでいた、と、
被害者や周囲にいた人間への事情聴取から情報が得られていたが、
直後地面に叩きつけられ、呻き声と化したそれは奇声の類と思われていた。
犯人は小島という30代の男。
しかし、取り調べでは黙秘を続けていて詳細な動機は分かっていない。
当然、
Aのような推測をしていた人物はいなかった。
「気になることでもあるのか」
『…先日の事件。
小島のことは、公安でも調べているんでしょう。
警視庁前で起こった事件です。
…警察や国に対する挑発、警告とも考えられるわけですから』
「それと新星教団の監視と、何の関係がある」
『…』
「組織として黒だという証拠は無かったとはいえ、
君にとって深い因縁のある組織…、因縁のある事件だということは理解している。
しかし、安易に結びつけようとするのは――」
『…小島は、最後に自らの首を刺そうと、していました』
瞬きと同時に、
すっと鋭くなった視線を向けられたAだが、
その声色も表情も、変わることはなかった。
「そうらしいな。
周囲にいた目撃者からの情報からも、そう見えたと」
『…』
「捕まる前に、と自棄になって衝動的に、
もしくは初めからそのつもりだったか。
あぁいう現場で犯人がとる行動としては、珍しくはない。
…安易に結びつけるのは危険だと、言っている。
そのくらい言われずとも理解できる人間だと、思っていたつもりだが」
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作者名:white12 | 作成日時:2021年1月7日 18時