Marble －茜色の言葉－ (6)【名探偵コナン】 (ページ39)

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いつもと違う_4 ページ39

「し、...失礼します」

「…」

ペコリと頭を下げて去っていくサヤカに、
軽く口元を緩めてうなずくような仕草をした降谷。

降谷は、
風見や他の部下からの報告で、あの日の事件については当然知っていた。

切りつけられた被害者の中に、Aがいたことも。

犯人の男を取り押さえたのが、
Aだったことも。

「…かすり傷、か」

血が怖くなったと、
それゆえ刑事をやめたのだと、
そう話していたAは、自らの血は問題ないと言っていた。

しかし、
先日の事件では、切りつけられた人間が他にも複数いたはずで、
現場の写真から、地面に滴る血は決して少なくはなかったはず。

何より、
Aにとっては、
10年前の、両親が犠牲になったあの事件を連想させるものになったかもしれないと、
降谷は思っていた。

「…徹夜のしすぎだと、小言を言われそうだな」

ポツリと呟いた言葉は、風見に対してのものだったのか。
あるいは――。

ロビーからは、
普段なら階段を使って駆け上がることもあるのだが、
今日は少し疲れていることも自覚していた降谷。

なにせ、
昨日まで2徹で書類作業に追われていたというだけでなく、
さきほどまで組織の仕事をしていたのだから。
その書類作業の中には、
先日の通り魔事件に関するものも当然含まれていた。

ため息をかき消すように、
小さな電子音とともにドアが開くと、
降谷は、自嘲めいた笑みを浮かべてオフィスに戻って行ったのだった。