Marble －茜色の言葉－ (6)【名探偵コナン】 (ページ31)

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かすれた声_2 ページ31

サヤカに至っては、
椎名から事情を聞いた後、
まるで国家公安委員会から大目玉を喰らうほどのミスでもしたかのように、
言葉をうまく紡げない様子で泣き出しそうな顔を浮かべ、
何度も何度もAの怪我の様子を心配していた。

“何で…”

“腕怪我したら仕事に支障が出るから気をつけてって言ってたのは、
水瀬さんじゃないですか！なんでそんな危ないこと――”

顔を思い切り歪めて、
痛みを与えないように、
Aの腕にギリギリ触れないようにして手をかざしながら、
見つめてきたサヤカの泣きそうな顔を思い出すA。

『…心配、かけちゃったなぁ…』

サヤカは少し前から他の部署に書類確認に出向いていて、
その隙を見て部屋を出てきたともいえるのだ。

部長よりも誰よりも心配そうな顔をしていたのは彼女で。
つい先ほどまで、
”怪我が治るまでしばらく休んでいてください…。仕事は私がやりますから！“と、
サヤカから泣きそうな顔で訴えられていたのだ。

しかし、Aの歪められた眉の理由は、
もちろん、それだけではなかった。

(あの男...)

今は捜査一課が取り調べているはずだ。
警視庁前で起こった挑発的とも言える通り魔事件。

その目的を深読みしながら思考するAだが、
投げ飛ばす寸前に男が口にしかけた言葉が、
耳に、頭に、
張り付いて離れなかった。

「あ…、水瀬さん」

中途半端な時間に休憩をとっていることもあり、
誰もいなかった休憩室。

そこに、入り込んできた声の主は、
椎名だった。