狂い咲きの_4 ページ18
『…』
「…え？…君が、捕まえてくれたのか？」
ハロの姿を目にして走ってきたものの、
リードを手にしていた人物が誰かはさすがに把握していなかったようで、
驚いた様子の降谷。
その足元には嬉しそうに”アンアン！！！”とハロが纏わりついていた。
『…えっと…、まぁ、そんなところです。
道路を渡ろうとしていて…、危なかったので』
「…そうか。悪かったな」
申し訳なさそうな顔で眉を寄せた降谷に手にしていたリードを渡すA。
この犬は本当に降谷の飼い犬らしく。
警察庁から離れられない状況で風見に世話を頼んでいたのだが、
アクシデントにより逃げてしまったのだと、事情を聞いたA。
降谷は風見から状況を聞いた後、
すぐに書類作業を終えて、車でここまで探しにきたらしい。
部下から電話を受けた風見が、
警視庁で対応に追われていることなど、
Aは知る由もないのだが。
(...また、無茶な運転をしてきたのかしら)
おそらく近くにあの車を停めているのだろう。
警察庁からここまではそれなりの距離があるのだが、
随分と早い飼い主の到着に、そんな詮索がAの頭をよぎった。
「…走っていたところだったのか？」
『え？…そう、ですけど』
ジョギング中に出くわしたのは、初めてじゃない。
やはり、こうも度々出会すことに複雑な感情もあるわけだが、
ハロという緩衝材のような存在があるからか、
Aは、
『あの喫茶店に行こうかと思っていたんですけど…、
お会いできて良かったです。
今日は…”お休み”だったんですね』
と、口元を緩めてハロを見つめた。
「まぁ、毎日働いているわけじゃないからな…」
『彼女…、えっと、
…梓さんに預けても良かったのかもしれませんけど』
「いや、…それはやめてくれ」
確かに、”安室”という店員の犬というわけじゃないのかもしれない。
そう考えたAは、
事情を理解したように微妙に口元を歪めて小さく頷いたのだが、
それは降谷の思考とは少々違っていた。
彼の飼い犬を連れて、
梓に預けるなどという状況になれば、
いくら言葉巧みな降谷とて、少し面倒なことになりかねないと思った訳で。
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作者名：white12
| 作成日時：2021年1月7日 18時
