桜_4 ページ9
『…前にも言ったと思うけど、
何故か…貴方と度々鉢合わせたあの男。
取引先の、北川さんって人。』
「…」
『癪だけど、…貴方に、随分失礼なこと言われたおかげで、
色々吹っ切れたところもあったから。
だから、一応お礼言っておくわ』
そして、またふいっと視線を戻すAは、
静かに色鉛筆を走らせ始めた。
お礼を言っておくと言いながら、
視線を外した直後、
彼女が一瞬苦しそうな表情を浮かべたことに萩原は気づかなかった。
「…絵描きさんなんじゃないかって、楽しそうに話してたぞ。」
『え？』
「あの子たち。
前にも会っただろ。この公園で。
月島のこと、凄く絵が上手だから、絶対絵描きさんだって。」
そういえば、少し前に、
米花町あたりで歩美ちゃんと光彦くんに会ったな、と思い出すA。
その時、そういう会話を交わした気がする。
『…そんな訳ないでしょ』
色鉛筆を持った手を止め、
今度は、少し離れた場所でサッカーボールを蹴り始めた、
子どもたちの方へと視線を向けるA。
その声は、その表情は、とても柔らかかった。
「月島は、子ども好きそうだな」
『…は？』
「いや、何かちょっと雰囲気違うっていうか。
さっき、…あ、前にここで会った時も、歩美ちゃんたちと話してるの見てたら、さ。」
『…そうね。好きよ』
「…え…」
自分で聞いておいて、
“好き”というワードに反応したのか、
やはり、その優しげな声に反応したのか、
萩原は動揺する様子を見せた。
『貴方よりは、ね』
「…は？」
『貴方よりは、子どもの方が、ずっと好きかしら』
随分皮肉めいたセリフで、
萩原のことが苦手だと遠回しに告げるAだったが、
子どもたちの影響なのか、その声はまだ優しげで。
「…月島は素直じゃないよなぁ」
『どういう意味よ。
…っていうか、貴方、子どもいるんでしょ？』
「は？」
『…良く分からないけど、この間のメガネの男の子…とか。』
「…は？」
Aから投げかけられた問いに、
萩原は全く理解できない顔をして苦笑いをしている。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (
レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです！(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2019年12月12日 17時
