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Emerald Mist_2 ページ30

『エメラルド・ミスト頂けますか?』

「俺は、同じものを」


しばらくして、
シェイカーから注がれた淡いブルーの液体が目の前に運ばれてくると、
Aはそれに静かに口をつけた。

そのすぐ後に、
新しいバーボンのグラスが差し出され、
同じくそれに口をつける萩原。


「…それ、確か前にも飲んでたよな」

『…そうね。好きなのよ。
一応、デザイナーとしてはMistっていう名前で仕事してるんだけど、
安直だけど、それもこのカクテルからとったの。』

「…」


“好きなのよ”
というワードに反応してしまう自分に、こっそりため息をつく萩原。
2ヶ月前の米花公園での光景のようだ。

Mistの由来についてのAの話など、
まるで聞こえていないようだ。



『…萩原さんは、バーボンが好きなのね』

「…え…」

『前にも飲んでなかった?
確か、あの、松田って刑事さんと一緒に』

「あ、…よく覚えてるな。」

『一応、記憶力は良い方なの』


Aのそのセリフは、
つまり、あの告白は忘れていないというように捉えてしまいそうになり、
萩原はグイッとグラスを大きく傾けた。




そして、20分ほどが経ち、自然と一緒に店を出る2人。
先に席を立とうとしたのはAなのだが、
“じゃあ、そろそろ俺も帰ろうかな”、と同じく店を出ようとした萩原を、
Aは拒絶しなかった。


『…それじゃ。』

「また、歩いて帰んのか?」

『…違うわよ。ここから歩くとちょっと遠いから。
ちゃんと電車で帰るから心配しないで。』


短時間でカクテルを2杯も飲んだくせに平然と話すA。
その言葉に、萩原はふと違和感を覚えた。

確かに近い距離ではないものの、
彼女はこの店から度々歩いて帰っていた道だったのだから。


「でも、前は歩いて帰ってただろ。
だから――」


思わず、Aが襲われた日のことを口にしようとして、
萩原は一瞬気まずそうな顔をした。


『…引っ越したのよ。杯戸町に。』

「え?」

『まぁ、…心機一転っていうか』


ゆっくり歩き出すAに、
少しだけ迷うそぶりを見せたものの、静かに並んで歩く萩原。


そして、

“何で付いてくるのよ”

と言われない今の状況に、萩原は戸惑った。

Emerald Mist_3→←Emerald Mist



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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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