Emerald Mist ページ29
1週間後。
米花町のBar Curiousのカウンターで、萩原は1人、
バーボンを飲んでいた。
松田が何やら携帯を眺めて小さく笑っているかと思えば、
昨日、Café Rainのホームページがオープンしたということを聞いたのは今朝のこと。
(…自分で仕事取ってくるって行ってたからな。
大変だろうな…。よく分からねぇけど)
Café RainにAが関わっている今、
Aに関連する話を聞く機会は多い。
何も言ってこない松田は、
ホームページ作成にAが関わっていることを知らないようだが、
萩原にとっては必然的に思い出される訳で。
それでも、
彼女に会うかもしれないこの店に足を運んでしまったのは、
そうそう偶然会わないだろうとタカをくくったからだろうか。
萩原も、この店がそれなりに気に入っていたのだ。
北川のことで、このBarに足を運びにくくなっていたA同様、
会うかもしれない、という懸念から店に来れなくなるというのは、
やはり複雑な心境だった。
それはまるで本当に、数ヶ月前のAの心境を重ねたようで。
そして、グラスを傾ける萩原は、
カラン…と開いた店の入口に視線を向け、
失敗した、というような表情で固まった。
こうも偶然が重なるものかと。
それでもどこか安堵したような、
どこか、嬉しいような。
ほんの少し柔らかく口元を緩める萩原。
『…あ…』
「…よぉ」
萩原を見つけると、
Aは一瞬戸惑った様子を見せたが、
そのままカウンター席に、つまり、萩原に、近づいてきた。
「…」
『…悪いけど、わざとじゃないわよ。
他に空いてないのよ』
確かに今はかなり客も多く、
テーブル席は1つ空いているが、4人がけのテーブルに1人で座るのは度胸がいる。
カウンターには、2組のカップルと中年男性。
その間の席は空いているが、
そこに座ると言うのもまた度胸がいるだろう。
という訳で、とでも言わんばかりに、
自身の隣に腰掛けるAは特段気まずそうでもなく、
その様子に、萩原は複雑そうにバーボンをグビリと飲み干した。
彼女のジワリと湧き上がる動揺には、
気づくことなど出来る訳もなく。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時