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デジャヴ ページ27

Café Rainを後にし、駅の方へと歩いていたA。


何度か顔を合わせていた場所なのだ。
思いがけず出くわした萩原に多少動揺したものの、
会うかもしれないことは十分分かっていた訳で。


しかし、最後に彼と顔を合わせた日とは比べ物にならないほどスッキリした表情のAは、
不快感を覚えることが微塵もなかった自分に、
少し困ったようにため息をついた。


そして――



「…月島…!」



デジャヴのような光景。


もう何度目だろうか。
追いかけてくるようにして、後ろから呼び止められるのは。


この声の、主に。

ゆっくり振り向けば、
そこには眉を寄せた萩原の姿。



“好きだ”と言われた言葉は、消えない。
軽い男が苦手だというのも、本心だ。

それでも、今のAにとっては、
やはりどう転んでも、晴れやかな気持ちの方が、
どこか暖かい気持ちの方が優っていて。


Aは、静かに口を開いた。


『…コーヒーでも飲みに行ったんじゃ無いの?あのお店に』

「いや、…そうなんだけど…」

『…』


どこか優しげな表情のAに、小さく動揺する萩原。


「…Webデザイナー、だったんだな。」

『えぇ。まぁ…ね』

「フリーに転身したって、…聞いた」

『貴方、あのお店の店員さんと仲良さそうだったもんね』

「…いや…」


それは事実なのだが、
最後に会ったとき、
軽い男の典型的なセリフのような言葉を吐いてしまった萩原は、
あからさまに気まずそうだ。


『…会社で色々あったのは事実よ。
でも、これでも、それなりに業績もあったから、
強がってでも、嘘ついてでも上手くやって行こうって、思ってたのよ。』

「…」

『だけど…、もう、上手く嘘をついて強がることが出来なくなって、
…自分はどうしたいんだろうって、初心に返って必然的に考えざるを得なくなって。
それで、フリーとしてやっていこうって、決めたの。
幸い、フリーデザイナーが何人か集まってる小さな会社に所属できて。
…まぁ、仕事は自分で取ってくるんだけど』

「…そうか…」

『まぁ…、色々あったとはいえ、あの会社で身についたことは多いから。
もちろん感謝もしてるし、少しは…迷いもあった。
でも今は、自分でどこまで出来るか、やってみようって…、思ってるの。』


Aの職業など、
状況など、当然知らなかった萩原は、
スラスラと零されるAの言葉に、
その、スッキリとした表情に、驚くと同時に安堵した様子を見せた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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