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認めるしかないだろ。_2 ページ15

“女だからって、
あまり調子に乗るなよ”



Corsoの社内で、
これまで何度も囁かれた言葉だ。
休憩室の談笑の中で。 Aがいない間のデスクの周囲で。


もう、今更そんなセリフ、
慣れてしまっている。

慣れてしまっていた。

はずなのに――


『…っ…』


じわりと揺らぎ始めた瞳。
涙腺がこれ以上緩まないように、 Aは強く唇を掴んだ。

先ほど一度緩みかけた涙腺が緩み始めるのは、
乱れた感情が再びザワザワと乱れ始めるのはいとも簡単だった。


(…担当は変わったんだから。
もう、…会うことはないんだから。)

“大丈夫”。
そう言い聞かせて、大きく息を吐き、感情を落ち着かせるA。


何事も無かったように、
そのまま歩き出そうとしたのだが――、


「――月島!」


後ろから聞こえた叫ぶような声に、ピタリと足を止めた。

一瞬迷うような仕草を見せ、
ちらりと振り向くと、
そこには、走ってきたのか少し息を乱した萩原が、いた。




『…何?』

「…いや…その、」

『あの子たちと約束してたんじゃないの…?』

「…まぁ、そうなんだけど」

『約束守らない大人はどうかと思うわよ』


ゆっくりと近づいて来ながらも、
歯切れの悪い萩原に、背を向けようとするA。


「ごめん」

『…え…』

「…悪かった」

『…は?』


しかし、急に謝罪の言葉をハッキリと告げられ、
小さく口を開いたまま、瞬きを繰り返した。


「…変なこと、言っちまったと思って。
傷つけるような、こと」

『…』


女慣れしているような柔らかい口調でなく、
少し乱暴な、素のままのような口調で言葉を紡ぐ萩原。

気まずそうに、しかし、自身の目を見つめて、
真剣なトーンで話す萩原に、Aは眉をひそめた。


「泣いてたっていうのは、気のせいなのかもしれねぇけど。
でも、…悪かった。」

『…』


以前、杯戸町のBarで、萩原がAに言った言葉。

“泣いてるみたいだから”

北川のことで抗ったAが、
その結果に葛藤していたAが、
悔し涙を耐えるように、カクテルを口にしていたときだ。

気のせいでしょ、と言ったAに、
萩原は何も言わなかった。



先ほど、”ゴミが入った”などと、
子どもたちに分かりやすい嘘をついたAを、
それ以上追求しないように、ただ、謝罪の言葉を零す萩原。


その言葉は、今のAにとっては、
――辛い、ものだった。


一旦落ち着かせた感情が、
ジワリと乱れ始めるのを感じた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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