鼓動_9 ページ49
「…言いたいこと言ってるAの方が良いとも思うし」
『…え?』
「強がってばっかじゃ…、拗れることもあるってのも、確かにそうだけど」
『…』
以前に言われたことを繰り返されるように告げられるAは、
少し複雑な表情で再び窓の外のライトへ視線を移した。
「…恥ずかしがって、そうやって強がってるAは、
…すげぇ可愛いけどな」
『…』
“何言ってるのよ”と反論しようとしたAの言葉は、言葉にならなかった。
ただ、開こうとした口を小さく震わせているだけ。
再び悩ましげに、気恥ずかしそうに目を細めるAは、
さらに頬を紅潮させるAは、
萩原の言葉の通り、”期待をしている”のか。
信じてみようと思ったのは嘘じゃない。
素直になれず、言い訳をして、
今更目をそらす気も、ない。
ギラリと光る、男の目。
先ほどの、萩原のそれを思い出すA。
“帰る”と言っていた萩原。
送って行ってくれるということなのか。
この車は、Aのマンションへ向かっているのか。
あるいは、彼のマンションに――、だろうか。
どちらにせよ、
これから起こるだろうことを、その行為を嫌でも想像してしまうAは、
心臓の音を、鼓動を大きくさせていた。
しかし、静かにハンドルを握る隣の男にやはりどこか暖かい何かを感じ、
自身の不安や葛藤が、素直になり切れない強がりが、
じわりと溶かされていくような感覚を覚えた。
『…ありがとう』
「ん?」
『…』
助手席から聞こえた小さな言葉。
その意図を問うたものの口を閉ざしたAに、
萩原はふっと柔らかい笑みを浮かべ、
アクセルと踏み込み少しだけスピードを増した車を、自身のマンションへと走らせたのだった。
――(END)
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時