あの夜の_3 ページ48
『…あの、萩原さんは…大丈夫なんですか?』
「まぁ、な。…連絡すりゃ良かったんじゃねぇのか?」
『いえ…、連絡先なんて知らないですし。』
「何なんだよ。まぁ、…別に良いけどな。
わざわざマンションまで来るくらい心配してんなら、会いに行きゃ良いんじゃねぇの?」
何だか試されているような、
挑発されているような松田の態度に、Aはうまく視線を合わせられない。
松田の”まぁ、な”という言葉に、
萩原と仲が良さそうな松田がそれほど焦った様子でもないことに、
彼は無事なのだろうと、Aは、少しだけ肩の力が抜ける感覚を覚えた。
『怪我…してるんですよね?萩原さん』
「…まぁ、な」
『…お大事に、って伝えてください。』
特に会いに来たわけでもない。
ただ、足が動いただけ。
…ただ、少し不安だっただけだ。
無事だと分かれば、それで良い。
“それじゃ”と、松田にくるりと背を向けたAは、
自宅マンションに戻ろうと数歩足を進めて、
再びゾワリとした感覚とともに、肩が小さく震え始めるのを感じた。
呼吸が浅くなりかけるのを大きく息を吸って、冷静を保とうとするA。
「…おい」
そして、後ろから肩に手を置かれ、ビクッと大きくそれを揺らし振り向くA。
吐き出す息は、震えていた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時