米花デパート_2 ページ42
周囲を見ると、
近くには、見覚えのある人物、佐藤刑事と松田刑事の姿もあった。
その奥には、パトカーとは違う黒っぽい車。
そして、バタバタと何やら騒がしい音が聞こえたと思うと、
その車から数名の防護服をきた警官が降りてきた。
( …機動隊…)
もう、既に2度目にしている、機動隊だ。
駐車場の方へと向かって行く彼ら。
こんな場面に度々遭遇するなんて、と、Aは複雑な表情を浮かべた。
そして、
『…え…』
駐車場から離れる方向へ何とか歩き出そうとして、
Aは一瞬固まった。
しかし、
“すみやかに避難してください!
駐車場からは出来るだけ離れてください!”
拡声器越しの大きな声が聞こえ、慌てて我に返り、
Aは、何とかその場から離れた。
『…はぁ…』
そして――、
人波に揉まれ、ズキズキと痛む右腕の痛みを抑えるように、
ゆっくり息を吐くと、
先ほど見た光景を思い出すA。
機動隊の面々の中。
1人、一瞬こちらに顔を向ける体勢で、
何やら指示を出すように他の隊員に合図を出している人物に、
気のせいか、見覚えがあった。
『…萩原さん…?』
防護服を着ているからはっきりは分からない。
あの、長い髪も、はっきりとは見えない。
でも、ちらりと見えた顔。
彼だった、気がした。
(…刑事じゃ無いって言ってたけど、
機動隊員ってこと…?
ううん、見間違いかも…しれないし…)
そんなことを考えていると、
カバンの中から振動音を感じ、スマホを取り出すA。
『――はい、…はい。
こちらは大丈夫です。
中の状態は分かりません。
まだ、不審物は調査中だということで…』
随分と情報が早いものだ。
もう、報道されているのだろうか。
電話の主は部長だった。
打ち合わせと営業先の米花デパートでの事件だ。
Aに対する心配、というよりも、
デパート自体を、今後の取引を心配しているような内容に、
Aは複雑な表情でため息を零した。
周囲は野次馬も多く、
警官たちが必死で避難を促している。
(…離れた方が、良いわよね。)
近くにいるのは危ないだろうという考えだけでなく、
やはり、自身が巻き込まれた事件の記憶から、
不安や恐怖がある訳で。
Aはものものしく立ち入り禁止テープが貼られている道路を避けるように、
社に戻るため、米花駅へと向かったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時